ハイヒールは女の心意気、と最初に書いた。でもその心意気、生半可な気持ちでは履きこなせない。猫背で膝をガクガクさせながら歩くくらいなら、履かないほうがマシ。すっと背筋を伸ばし、軽やかに歩いてこその、ハイヒールだ。

 夢乃は身長173㎝、ハイヒールを履くと街中ではかなり目立つ。だけど人目を気にするでもなく、飄々と人混みを縫って行く。クールなのか無邪気なのか、オトナなのか子どもなのか、16歳は多面体だ。

 自分を動物に例えたら、何だと思う?

「キリン、ですね。なんかおっとりしてそうな、あまりガチャガチャしてない感じ」

 そういえばちょっと眠たげなその眼差しも、キリンちっくだ。

 そのおっとりしたキリンが、ごく稀に、爆発するという。

「疲れたり、ものすごく眠いとき、自分的にふつうよりも良くない状態のときに、めちゃくちゃテンション上がっちゃって、すごく面倒クサイ人になることがあるんです。私じゃないみたいに、うるさくなります。きょうだいにも面倒クサイって言われちゃうくらい。気が済むまで騒いでますね、そういうとき。何なんでしょうね、自分でもわからない(笑)」

 いろんな自分を引き受けながら、これから生きていく。ハイヒールで歩き出した16歳、夢乃の前には、あらゆる可能性が広がっている。

  • 出演:夢乃(ゆめの)

    モデル。2000年1月28日東京生まれ。フェイスブックに載った写真をきっかけに今の事務所にスカウトされた。まだ仕事を始めたばかりのニューフェイス。

    オフィシャルサイト http://www.scroll2003.com/category/talent/

    ヘアメイク:内藤歩

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/