今彼女は、奄美と東京を行ったり来たり。10歳と6歳になるふたりの子どもを、奄美で育てたいと思ったからだ。

「奄美にいれば、おじいちゃんおばあちゃんとのふれあいがありますから。それに、島の人たちが全員で育ててくれるんです。私はその中で育ったおかげで、人を好きになる気持ちがあれば、どこへ行っても愛されることがわかりました。私、ニューヨークでもパリでも、言葉は全然話せないのに、会話ができちゃうんですよ(笑)」

 豊かな自然と、ゆっくり静かに流れる時間、そしてシマの温もりが、元ちとせというアーティストを作り上げたのだ。そして、これからは?

「歌いたいのは、大きい愛です。大事なことは、聞いたときにすぐわからなくても、後から、“このことを言っていたのか!”とわかる瞬間がある。私の中にも、島唄からもらった言葉のお守り、いっぱいあります。それがふとしたときにふわっと開いて、助けられてきました。ですから島唄も、本来あるべきものとして、続けていきたい。私に島唄の魅力を教えてくれた人たちも年を取りました。亡くなった方もいます。ですから唄をしっかり受け止めて、次の世代に継承していきたいと思っています」

  • 出演:元ちとせ(はじめ ちとせ)

    1979年鹿児島県奄美大島生まれ。2002年『ワダツミの木』でデビュー。
    リリース後『100年にひとりの声』『その声は涙でできている』と讃され彼女の歌はまたたく間に大ヒット、社会現象となる。チーフタンズ、スライ&ロビー、ディープ・フォレスト、坂本龍一、松任谷由実など大物アーティストとのコラボも大きな話題となる。そして昨年発表したアルバム『平和元年』は企画コンセプトに賛同した吉永小百合が題字をプレゼントしてくれた。現在は生活の拠点を奄美大島におきながら、全国各地でのワンマンライブやイベントコンサートなど精力的に活動している。2月19日浜離宮朝日ホールにてライブを開催予定。

    オフィシャルサイト http://www.office-augusta.com/hajime/

    ヘアメイク:村端ジン

    スタイリスト:美馬尚子

    衣装協力
    OKURA http://www.hrm.co.jp/okura/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/