ずっと彼女を応援している人によると、“彼女のパフォーマンスは観るもの、聴くものの魂を揺さぶる。まるで何かが降臨し、彼女の体を通してメッセージを伝えてきているよう”だという。これまで出雲大社、池上本門寺、奈良東大寺などからライブ依頼があるのもうなずける。

「ステージで歌っているときの記憶がないんです。ライブが終わってからマネジャーに録ってもらったビデオを確認して、ああ、歌えてたって安心するんです(笑)」

 そんな彼女のルーツとなる島唄とは? 
 島唄というのは、奄美で歌われる民謡のこと。「シマ唄」と書くのが本当らしい。シマというのは「島」をさすのではなく、なわばりの「シマ」。奄美の方言では自分の故郷や帰属する集落をシマと呼ぶのだ。そのシマごとに独特の節回しやメロディ、歌詞が生まれ、継承されてきたという。

「だから奄美の中では歌を聴くだけで、あの人はあの集落の人だ、とわかるんです。宴では、同じ曲にのせて、“私はどこどこから来ました”って挨拶しあったり、“今日は朝まで飲みましょう”ってかけ合いで歌っていく。アドリブも多くて、“うちの嫁はハブより怖いから、そろそろ帰ります”って歌ったり(笑)。それで最後は、踊りまでもっていきます。踊らせないと、お客さんは立たないから。踊らせてそのまま送り出すんです(笑)」

  • 出演:元ちとせ(はじめ ちとせ)

    1979年鹿児島県奄美大島生まれ。2002年『ワダツミの木』でデビュー。
    リリース後『100年にひとりの声』『その声は涙でできている』と讃され彼女の歌はまたたく間に大ヒット、社会現象となる。チーフタンズ、スライ&ロビー、ディープ・フォレスト、坂本龍一、松任谷由実など大物アーティストとのコラボも大きな話題となる。そして昨年発表したアルバム『平和元年』は企画コンセプトに賛同した吉永小百合が題字をプレゼントしてくれた。現在は生活の拠点を奄美大島におきながら、全国各地でのワンマンライブやイベントコンサートなど精力的に活動している。2月19日浜離宮朝日ホールにてライブを開催予定。

    オフィシャルサイト http://www.office-augusta.com/hajime/

    ヘアメイク:村端ジン

    スタイリスト:美馬尚子

    衣装協力
    OKURA http://www.hrm.co.jp/okura/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/