それにしても、バレエダンサーの身体能力ってやっぱりすごい。

 今回の舞台の目玉のひとつ、『悲しい酒』を踊る関口祐美さんの踊りを見て、そう思った。

「バレエは体力勝負ですから、筋力レベルで言えば若いほうがいい。でも表現力は、20代後半になってようやく身についてきたような気がします。人生においての経験や環境の変化を経て、さまざまな感情が自分の中から出てくるようになりました。30代になった今だから、『悲しい酒』に抜擢していただけたのだと思います」

 167㎝と、女性バレエダンサーにしては長身の関口さん。エレガントで抑制の効いた動きの中に、ひばりさんの歌の情念や哀しみが秘められている。同時にその肉体を通して、関口さん自身の情熱も、伝わってくる。

「3歳から踊っています。先生が厳しくて、でもその厳しさに憧れましたし、心まで鍛えてもらいました。バレエを突き詰めていくと、自分の弱さや個性が見えてくるんですよ。どう生きたら美しいのか、バレエはそんなことまで教えてくれました。バレエと出会えて、良かったと思っています」

〈一緒に踊っている男性ダンサーは、清水勇二さん(左)と土橋冬夢さん(右)〉

『HIBARI』NBAバレエ団2015年6月公演

「HIBARI」振付リン・テイラー・コーベット ゲスト和央ようか/「A Little Love」振付マーティン・フリードマン ニーナ・シモンズの音楽や歌詞から感じたインスピレーションをバレエで表現。6月13日(土)16時30分開場17時開演 14日(日)11時45分開場12時30分開演/16時30分開場17時開演 メルパルクホール東京
チケット取り扱いはNBAバレエ団http://www.nbaballet.org/

  • 出演:関口祐美(せきぐち ゆみ)

    5歳のときからバレエを始める。さまざまな舞台経験を積んだ後、NBAバレエ団に入団。入団後は「ジゼル」ミルタ、「くるみ割り人形」雪の女王、「ケルツ」ブラウン、「ドン・キホーテ」森の女王などを踊ってきた。
    http://www.nbaballet.org/dancers/woman/sekiguchi.html

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『BAILA』『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/