ひばりさんの歌をバックにバレエダンサーたちが踊ると、いったいどんな舞台になるのか、芸術監督の久保さんに聞いてみた。

「リンさんは天才です。感性が豊かで、だからこそテレビ番組を見ただけでひばりさんの本質を見抜いたんでしょうね。音楽的な感覚もすばらしいので、音楽とステップを完全にシンクロさせることができるんです」

 稽古場に潜入してリハーサルを見ると、たしかに! 『お祭りマンボ』も『悲しい酒』も、ひばりさんの歌とダンサーたちの動きに、何の違和感もない。

「極端な話、耳の不自由な方が彼女の振り付けたダンスを見たら、音の流れを感じてくれるのではないでしょうか。歌のリズム、メロディ、息づかい、グルーブ感すべてが、リンさんによって身体表現になる。相乗効果で、すばらしい舞台になりました」

 久保さん率いるNBAバレエ団はもともと、古典的バレエだけでなく、新しい試みも次々にトライしてきた革新的なバレエ団。演歌とかクラシックバレエとか、従来の枠組みをとっぱらった新しいエンタテイメントは、こういう挑戦から生まれるのかもしれない。

「僕たちは攻めのバレエ団ですから(笑)。この舞台はバレエ公演というより、バレエショーだと思います。ひばりさんのファンでなくても、バレエのファンじゃなくても、絶対楽しめると思いますよ!」

『HIBARI』NBAバレエ団2015年6月公演

「HIBARI」振付リン・テイラー・コーベット ゲスト和央ようか/「A Little Love」振付マーティン・フリードマン ニーナ・シモンズの音楽や歌詞から感じたインスピレーションをバレエで表現。6月13日(土)16時30分開場17時開演 14日(日)11時45分開場12時30分開演/16時30分開場17時開演 メルパルクホール東京
チケット取り扱いはNBAバレエ団http://www.nbaballet.org/

  • 出演:久保紘一(くぼ こういち)

    16歳でモスクワ国際バレエコンクールでトップの成績を獲得し、渡米。20年間コロラドバレエ団のプリンシパルとしてすべての公演に主演した。NYタイムズで「完璧なるバレエの巨匠」と評され、日本人では始めてダンスマガジンの表紙を飾った。2012年よりNBAバレエ団の芸術監督に就任。2014年文化庁芸術祭賞舞踊部門新人賞受賞。
    http://www.nbaballet.org/dancers/director/index.html

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『BAILA』『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/