今年始めのロンドンでの舞台『家康と按針』では、家康と三浦按針をつないだ宣教師役を熱演。現地のほとんどの新聞に絶賛された。主役ではない俳優の名前が新聞に載り、評価を得られるのは珍しいことだったという。

「メディアが評価してくれたのは、うれしかったですね。実は初日は39度の熱を出してしまい、喉もガラガラ。リハーサルも休ませてもらい、皆さんにかなり迷惑かけてしまったんです。とにかく本番はもうやるしかないと思って舞台に立ちました。良い評価が出て本当に良かったです。『逆に熱が出てよかったんじゃない』なんて、周りの人からは言われたりもしました」

 主役ではないとはいえ、3時間ほぼ出突っ張りで、英語と日本語の両方の台詞がある役。衣装も鎧を着るシーンなどがあり、大変な重労働だったようだが、ほぼ2週間の滞在を乗り切った。

「日本とはまた違う、お客さんの反応が面白かったです。どっかんどっかんウケたり、面白くないとブーイングが起こったり。反応がものすごくはっきりしていますからね」

 近々、その舞台を演出したグレゴリー・ドーランの新作を観に、また渡英することになっている。役者・古川雄輝が単独でロンドンに乗り込む日も、案外近いかもしれない。

  • 出演:古川雄輝

    1987年東京都生まれ。7歳でカナダ・トロントへ渡り、11年間を海外で育つ。高校入学と同時に単身、ニューヨークへ。18歳で帰国し、慶応大学理工学部に入学。エンジニアを目指す。2009年、ミスター慶應に選ばれたのを機に10年夏には役者デビュー。フジテレビBS系・CS系のドラマ『イタズラなKiss~Love in Tokyo』が中国で放映されたことから現地で大人気に。日本でもドラマ『八重の桜』、『夫のカノジョ』、映画『潔く柔く』、『永遠の0』と出演が続いている。14年1月10日からは新宿・紀伊國屋ホールでの舞台『俺達の明日』に主演する。

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太