MIYAKOの本拠地である、恵比寿の「ヴォイス・トレーナーズ・アカデミー」にお邪魔した。ヴォイストレーニングというと、先生が弾くピアノに合わせて声を出すという情景が思い浮かぶのだが、違った。

「まず、椅子に浅く腰掛けます。脚は肩幅に開いて背筋を伸ばし、肩の力を抜いて。では一度軽く息を吐いてから、次に鼻から大きく息を吸いましょう。今度は口から吐いて。今のは深呼吸ですね。はい、これが腹式呼吸です。」

 え? 腹式呼吸っていうと、お腹に手を当てたり、仰向けに寝て本をお腹にのせたりするのでは……と思ったが、そんなことをしなくても、簡単に腹式呼吸ができた。これがまず、ヴォイストレーニングの第一歩。

 アカデミーの指導方法は門外不出ということで、残念ながら取材中にうかがった興味深い話はこれ以上記すことができない。詳しく知りたい方はMIYAKO監修『もっと歌がうまくなる!ヴォイス・トレーニング「聴かせる歌い方」のコツ58』をご覧いただきたい。

 ところで、ヴォイストレーニングで大切なことは?

「一番大切なのは正しい呼吸、そして振動と共鳴。さらに言葉をきれいに発声・発音することが大事です。アクセントが違うと、言葉が聞き取れず、歌詞が伝わらなくなってしまいますから。大切なのは『個声』を確立すること。その人だけの『個声』はトレーニングの積み重ねによって磨かれていくのです」

 MIYAKOの歌は、美しい日本語で歌われているという定評がある。正しいメロディを保ちながら、話し言葉と同じようにアクセントをつける。実はこれが難しい。そのテクニックを体得しているからこそ、正しい歌詞が耳に届くのだ。

 アカデミーでは、歌手をめざす若い人たちにヴォイストレーニングやゴスペルの歌唱を指導している。

「若い子に教えながら、自分自身のトレーニングもしています。一緒に歌うことでエネルギーをもらっていると感じますね」

 アカデミーでは、つねに後進たちに見られている。彼らの前で恥ずかしいことはできない、という気持ちが原動力になる。また、真剣に歌に取り組む姿を見せることは、彼らの信頼につながっていく。

「先日、ヴォイストレーナーの全国大会で7曲歌いました。それはもうプレッシャーがすごい。でも、1曲目の「別れのブルース」を力まずに最後まで歌いきったら、会場中がぽかーんと口を開けて驚いていました」

 おなじみの「窓を開ければ~」というあの曲をはじめ、いずれも知られた名曲ばかり。それをMIYAKOらしく歌い通すことができた。「初めて父にほめられた!」やっぱりお父さんですか。

 日本語に限らず、ジャズやゴスペルなど英語の曲でも、MIYAKOの歌はネイティブのように自然に聞こえる。英語が堪能なこともあるが、それだけではないように思う。まるで話すように歌うことができる自然体の歌。

 ふだんのMIYAKOも自然体の人だ。だけど、それだけじゃない気がしてきた。というのは……。

  • 出演:MIYAKO

    東京都出身。1月24日生まれ。水瓶座O型。小学5年生のころから独学でピアノ、作詞作曲を始め、中学時代にはフォークソングクラブを設立し、学園祭では初めてのライブを体験。高校時代はフォーク村同好会に所属、オリジナル曲でのライブ活動を中心に、ヤマハのポプコンなどにも出場。留学先のボストンのエンディコット・カレッジでは、コマーシャルアートを専攻。卒業後はデザイナー、アートディレクター、カウンセラーなど、多彩な才能を活かし第一線で活躍。1996年、ライフワークである音楽を再開。ニューヨークのカーネギーホール、ホノルルのハワイシアターなど、世界の檜舞台を経験。2009年10月21日、MIYAKOとして念願のメジャーデビュー。透明感のある伸びやかな歌声はまさに自然体。限りなくキレイを追求する、スタイリッシュな「新世代アラフォー」。デビュー以降は、フォーシーズンズホテル椿山荘東京の「スタンダードジャズとほたるのゆうべ・ディナーショー」をはじめ、「着物 de Jazz」、年2回開催の「MIYAKO & Papa Special Live」など、精力的にライブ活動を行なう。
    2013年6月、コロムビア・マーケティング(SVACレーベル)より待望のファーストアルバム『白い花の咲くころ』を発売。全19曲入り。歌謡史100年の名曲の数々をジャズ・ピアニストの小泉宏がスウィートジャズコンボ風にアレンジし、MIYAKOが誘う魅惑の世界が完成した。。
    公式ホームページ http://www.miyako-creative.com/
    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/miyako-creative/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影:萩庭桂太