間もなく、彼女は50代に突入する。50代のモデルとして、生きていく。
「仕事場で50代60代の先輩モデルの方たちにお目にかかることもあって、すごく励まされます。若い時には表現できなかった女性の強さ、しなやかさ、色気のようなものが、表情や仕草で伝えられるようになるんですね。そういうのは、外見の美しさじゃない、内側から出てくるものなのだと、痛感しました。年齢を重ねた人にしか出せない憂いとか、可愛らしさ、その人らしさが表現できる。そういうモデルになっていきたいです」
　結婚とか出産とか離婚とか病気とか、経験してきたいろいろな出来事が、彼女のルックスから無駄なものを削ぎ落とし、さまざまなニュアンスを加えている。10代20代の小娘では太刀打ちできない存在感と余裕、そして覚悟が、50代モデルの大きな武器だ。
「義父が亡くなったとき、もう会話もままならなくて、側にいる義母に、手だけで何かを伝えようとしていたんですって。片手で３本指を立てて、その後両手で９本見せる。それを繰り返すんですって。最初はわからなかったけど、『３と９、わかったわパパ、サンキューね、ありがとうなのね！』って義母が言ったらニッコリ微笑んで、息を引き取ったそうです。それを聞いて、ああ、私もそうやって死にたいなって」
　落語が教えてくれる人間のこっけいさ、やさしさ、切なさや哀しさも、これからの彼女の武器になるに違いない。