ファーストキスを仕事に捧げた彼女がこれからどんな恋をするのか、気になるところである。

 敢えて16歳に聞こう。プライベートでは、どんな男性が好きなの?

「黒人が好きなんです」

 K女史も萩庭桂太も私も、これには動揺した。いや、いきなりそれはどうなの?

「地元の中学校に黒人の男のコがいたんです。かっこいいな、と思いました。下品な感じの人は嫌だけど、バスケがすごく上手な感じとかいいなあ!」

 なるほど。ひょっとして3年後くらいに加恋ちゃんに会ったら、別人のようにシスターな感じになっていたらどうしよう……。彼女が幸せならいいんですが。

 最後に「どんな大人になりたいか」と聞いてみた。答えはすぐに返ってきた。

「人を癒せる大人になりたいです」

 彼女がそんなことを思うのは、仕事の現場で攻撃的になる人をたくさん見てきたからかもしれない。そしてすでに、この人の笑顔は、少なくとも出会った人たちを癒しているような気がする。

 癒す、とはどういうことなんだろう、と、ふと思った。

「自分は傷ついている」と思う人々は癒しを求める。しかし癒せる人というのは、その傷の意味をさらに知っているということなのではないか。

 美山加恋という人は、子どもの頃から役で得たその傷の意味を、忘れずに蓄えている。そろそろ……、いや、もはや女優、なのである。

  • 出演:美山加恋

    1996年東京生まれ。6歳から子役として活躍。関西テレビ『僕と彼女と彼女の生きる道』で脚光を浴び、最近では東海テレビ『鈴子の恋』、フジテレビ『高校入試』、映画『ももへの手紙』(声優)、舞台『神様の観覧車』など30以上の人気ドラマ、映画、舞台に出演。現在フジテレビ『山田くんと7人の魔女』でテレパシー能力をもつ大塚芽子役を熱演中。10月からスタートのNHKスペシャル時代劇『雲霧仁左衛門』、10月12日公開の映画『埼玉家族』に出演。
    http://horipro.co.jp/talent/PF117/
    公式ブログ http://ameblo.jp/karen-mi/entry-11599803306.html

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太