その後、活躍の場は飛躍的に広がった。服部克久氏のコンサート「音楽畑」の世界ツアー(ハワイ、台湾、北京)にも参加。ソロコンサートでイタリア、韓国、台湾などにも出向いた。ソロアルバム『河』は全米FMチャートでベストテン入り。2004年にはチャン・イーモウ監督の映画『LOVERS』のテーマ曲を手がけ、2010年には北京で凱旋公演も。
 さらに現在はBS-TBS音楽紀行番組『こころ ふれあい紀行~音と匠の旅~』にレギュラー出演中。TV番組で彼の演奏がBGMとして使われることも多い。
 また二胡の先生として、二胡教室『天華二胡学院』を主宰している。
「二胡はすごくシンプルな楽器なので、すぐに演奏できるようになります。『きらきら星』くらい簡単な曲だったら、1日で弾けるようになる。でも、そこからの道のりが長い。きれいな音を出せるようになるまで、時間がかかります。音程もひとつひとつ、自分で作らないといけないから、すぐに上手になることはできません。だから、大事なのは焦らないこと。落ち着いて、ゆっくりじっくり練習することです」
 ちゃんと練習すれば、ジャーさんみたいにきれいな音色を出せますか?
「二胡は、その人の個性が出やすい楽器です。長年弾いていると、その人らしい音が出ます。最終的には、その人の性格が音に反映されるし、その人の好きな音色に落ち着きます。それに、誰かの楽器を他の人が弾くと、最初は本来の持ち主の音色が聞こえます。楽器にその人の音色が染みこんでいるんですね。そして私の楽器を誰か他の人が弾くと、私が弾いてもなかなか元の音色に戻らない。繊細な楽器なんです」
 嫋々とした、伸びやかな、天に届くようなジャーさんの二胡の音色は、逆境にあっても未来を信じて力強く生きてきたジャーさんの心根が、反映しているのかもしれない。

  • 出演 :ジャー・パンファン JIA PENGFANG

    中国黒竜江省生まれ。18歳でプロの演奏家を目指して北京へ。中国国内屈指の楽団「中国中央民族楽団」に入団し、ソリストとして10年間、第一線で活躍。1988年、二胡の新たな可能性を求めて来日。作曲家・服部克久氏との出会いが転機となり、日本での音楽活動の場を広げる。コンサート活動のほか、多ジャンルのミュージシャンとの共演やアルバム制作、映画(「LOVERS」)、CM音楽(JR東海・富士ゼロックスなど)、テレビ(NHK「漢詩紀行」「故宮」の音楽、「トップランナー」出演、日経CNBC番組テーマ曲)などでも活躍。また海外公演(アメリカ、イタリア、韓国、台湾他)も積極的に行っており、2010年は故郷中国で初の凱旋公演を行い、中国でも注目されている。これまで発売したオリジナルアルバムは20枚を超え、世界各国で発表され海外のファンも多い。2018年来日活動30周年を迎えた。

    オフィシャルサイトhttp://jia-pengfang.com/news/index.html

  • 【公演予定】
    7月8日京都、7月28日静岡、8月26日富山、9月24日静岡、10月12日東京

  • YEOからお知らせ:YEO専用アプリ

    このYEOサイトにダイレクトにアクセスするためのスマホ・タブレット用の無料アプリです。
    とてもサクサク作動して、今まで以上に見やすくなります。ダウンロードしてください。
    iOS版 iOS

    Android版 Android

  •  

    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/