ちょうどその頃、ソプラノ歌手をやっている友人が、素晴らしい先生がいる、と教えてくれた。優しい先生で〝才能のない人にも個人レッスンしてくれるらしい〟と聞き、そのコロソヴァ先生のもとに早速通い始めた。そして半年間、声楽の勉強をして、コロソヴァ先生が教えている国立音楽学院に見事合格。以来2年間、コロソヴァ先生の元でみっちりと声楽を学んだ。20歳にしてようやく、本格的な声楽の勉強がスタートしたのだ。
「コロソヴァ先生は歌い方だけでなく、歌の内容やそれをどう観客に伝えるか、音楽の素晴らしさをすべて教えてくれました。最初の教師というのは本当に大事です。先生は最初に僕が行ったとき、〝耳も声もダメだけど、趣味で歌うなら・・・・〟、と思ったらしい(笑)。でも僕は頑張ったし、2年目の授業が終わる頃には、最優秀という成績をつけてくれました。僕は先生のおかげで、音楽の世界に入ることができたんです」
 よくそんなに頑張れましたよね! ダメだの下手だの言われたら、ふつう諦めるでしょうに。
「どうしてなのかわからないけれど、私は自分が歌える、と信じていたんです。理由はわかりません。自分の中で知っていたんです。音楽を見つけたときに、これだ、と思った。頭では理解できなくても、体が『あなたは歌手だよ』って言うのが聞こえた。私が日本に来たときと同じです」
 えー、何が同じなの?

  • 出演 :ヴィタリ・ユシュマノフ

    サンクトペテルブルグ生まれ。マリンスキー劇場の若い声楽家のためのアカデミーで学ぶ。ライプツィヒのメンデルスゾーン・バルトルディ音楽演劇大学を卒業。2013年の秋以来度々来日し、各地で公演。2015年春より日本に拠点を移した。「ドン・カルロ」のロドリーゴ、「ドン・ジョバンニ」の主役でオペラに出演。2017年3月びわ湖ホールオペラ「ラインの黄金」ドンナーを演じ、5月には「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」にも出演。日本トスティ歌曲コンクール2015第一位及び特別賞、第14回東京音楽コンクール声楽部門第二位、第52回日伊声楽コンコルソ第一位及び最優秀歌曲賞受賞。今年3月には日本の歌曲を集めたCDをレコーディングする予定。
    ホームページ http://vitalyyushmanov.com/

    〈公演情報〉
    『ヴィタリ ロシアの魂を歌う』
    関西公演2018年3月14日(水)14:00開演(13:30開場)びわ湖ホール
    東京公演2018年3月15日(木)14:00開演(13:30開場)オペラシティリサイタルホール
    問い合わせ:株式会社ジョイフル・アーツ http://joyfularts.co.jp/

  • 歌劇『イオランタ』(演奏会形式/日本語字幕付)にエブン=ハキア役で出演
    6月12日(火)18:30開演 サントリーホール

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/