セレイナ・アンは、インターネットの海から生まれた。
「14歳のクリスマスの夜、風邪をひいて寝込んでしまったんです。せっかくのクリスマスなのに何もすることがないからYouTubeを見ていたら、洋楽の弾き語りをしているアメリカ人の女の子がいた。テイラー･スイフトの『Our Song』を歌っていました。それを見て〝カッコイイ！　私もこれ、やりたい!!〟と思った。その日のうちに、家にあったギターを練習し始めたんです」
　ギターの教本なんかなかったけれど、ネットで検索すれば〈初心者向けギター講座〉が簡単に見つかる。
「がんばって練習しました。洋楽ってけっこう、ネットにコードが載っているんです。マイナーな曲でも調べればすぐに出てくるんですよ。コードと歌詞だけ見て、あとはひたすら弾いて歌って、練習です」
　３年ほど経った頃、そうやってモノにした曲を歌う自分の姿を動画に撮って、YouTubeにアップ。人気曲や好きな曲をカバーして、次々と上げていった。それを見た音楽関係者がアプローチしてきて、大学２年のときにインディーズ・デビュー。路上ライブにも挑戦した。
「ＳＮＳで告知すると〝見に行きます！〟というレスポンスも多くて。最初は代々木公園でやったんですけど、100人くらい集まってくれました。警備員さんに注意されて３～４曲で終わりましたけど（笑）」
　音楽に目覚めたのも、成長したのも、拡散したのもネットの海から。メジャーから声がかかったのは、それからたった1年後のこと。
「でもしばらくの間、〝メジャーデビューした！〟という実感がありませんでした。目の前のレコーディングやライブをこなすのに必死で、感情が追いつかなかったのだと思います。1年たってようやく最近、プロになった実感が湧いてきました（笑）」