ガレージシャンソンショーの演奏部門を担当するのが、アコーディオニストの佐藤芳明。ガレシャン以外はノーメイクで活動しているので、今日は素顔で登場してもらった。

 ジャズを中心にタンゴ、プログレ、さまざまな伝統音楽、J-POPから演歌、そしてクラシックに至るまで、幅広く活動している超売れっ子ミュージシャンだ。

「僕はこれしかやらない、と決めているわけではないので、できるものならなんでもやるし、アコーディオンでオーダーがあるならなんでも面白がってやってしまう。そんなスタンスでやっていたら、いつのまにか何から何までやることになってしまったんです(笑)」
 国立音楽大学在学中、25年前にアコーディオンと出逢った。チェコのプラハに行ったとき、お土産として買ったアコーディオンを弾いてみたら面白くて、ハマってしまったという。ダニエル・ミルという奏者に惹かれて、パリに留学。帰国後は独自のスタイルを切り拓いてきた。

「スタジオミュージシャンとしての僕が大事にしているのは、オーダーが来たときに、そのオーダーに的確に応えること。そして相手が想像している以上のもの、想像を超えてまったく異質なものをも、提供すること。クライアントとのそういうやりとりが、僕としては1番面白いんです。
 アコーディオンというだけで、先入観や思い込みが激しいんですよ、世間的には。日本だとエッフェル塔の映像をバックにシャンソン、という感じですよね(笑)。でも、そうじゃないアコーディオンもありますよ、と、僕は言いたい」

 そんな佐藤が今、取り組んでいるのはブルガリア音楽とクラシック。

「かなり本格的にやろうとしているので、ブルガリアの節回しを鍵盤上できっちり弾けるようになるのが近々の目標です。クラシックは、バッハ、バロックものをやりたいんです。クラシックのアコーディオンは同じ楽器を使っていても音の出し方がすごく多彩なので、その発音のさせかたというか、楽器の鳴らし方、もしくは音の切り方というか、そこをもっと追求したいですね」

 ここ何年か、チェンバロのパートを佐藤がアコーディオンで演奏し、ソリストと競演する試みが続いている。いわば、アコーディオンの怪人。そんな彼にとってガレシャンは?

「言ってみれば‘行き過ぎた課外活動’みたいなものですけど、ここでしかやれないことがたくさんあるので、面白がってやっています」

 伴奏がアコーディオン1台とは思えないその音の厚みは、怪人・佐藤ならではの技。

「あたかも一緒にベースやドラムがいるかのように、自分で勝手に妄想しながら弾いています。僕の中では完全に(ベースやドラムが)いるんです。その思い込みがわりとお客さんに伝わるんですね。思い込みだけじゃなく、それ以外も実はいろいろなテクニックを駆使しています。これは後輩のアコーディオン弾きに言われたんですけど、ガレシャンを見てコピーしようとしたら、全然できなかったって。聴いただけでは気が付かない様な隠し技も忍ばせたりして、面白がってやっているんです」

 ガレシャンのときだけ、メイクしているし。

「まあ、非日常、ですね。パロディとか毒とかそういうものをパフォーマンスの中に盛り込むようなチャンネルに、ギュッと入りますね(笑)」

  • 出演:Garage Chanson Show(ガレージシャンソンショー)

    歌手・山田晃士とアコーディオン奏者・佐藤芳明のユニット。2001年に結成、2006年にいったん活動を停止したが2013年より活動を再開。2016年10月13日デビュー13年目を飾る3枚目のアルバム『13~treize(トレーズ)~』を発売した。リリースツアー第一弾を全国各地で展開、2017年1月13日(金)渋谷Mt.RAINER HALLがファイナルステージとなる。第二弾は3月中旬より下記参照。
    ライブ予約は http://fm.sekkaku.net/mail/1344315616/

    ●ニューアルバムリリースツアー

    『13~treize~』FINAL
    1/13(金)渋谷 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
    open18:00/start19:00

    前売り¥4500/当日¥5000(全席自由・drink別)

    問/PLEASURE PLEASURE 03-5459-5050
    e+でチケット発売中

    ●ガレージシャンソンショー13~treize~リリースツアー第二弾
春の演奏会『めばえ』

    3/16(木)名古屋 TOKUZO
    3/17(金)大阪 Vi-code
    3/18(土)松山 OWL
    3/19(日)福岡 ROSA ROSA
    3/20(月・祝)広島 ヲルガン座

    ●『外苑前の客人(まろうど)』

    3/28(火)南青山 MANDALA
    
客人:磯部舞子(ヴァイオリン)
    4/24(月)南青山 MANDALA
    客人:田島隆(タンバリン)

    山田晃士(やまだ こうし)

    ロックバンド『AROUGE』のヴォーカルとしてデビュー、1985年に脱退。1994年『ひまわり』(日本テレビ系ドラマ『横浜心中』主題歌)で歌手デビュー、20万枚を売り上げたがその1年後に活動を中断して渡仏。帰国後は多方面で活動を重ね、2007年『山田晃士&流浪の朝謡』をスタート。現在は『独り舞台』『ガレージシャンソンショー』など幅広く活動中。
    オフィシャルサイト【孤独中毒】http://www.koshiyamada.com/

    佐藤芳明(さとう よしあき)

    国立音楽大学在学中、独学でアコーディオンを始める。卒業後渡仏しアコーディニストDaniel Milleに師事。Pot Heads、佐藤鈴木田中など自身のリーダーバンドを持ちながら森山威男グループ、Salle Gaveau、ガレージシャンソンショー、ヨルダン・マルコフ・ブルガリア五重奏団などにも参加。国内外のライブ、レコーディング、舞台音楽などさまざまな現場で数多くの仕事をこなす。
    ライブ情報は http://www.geocities.jp/acc_sssaaatttooo/schedule.html

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/