永田ジョージが奏でるピアノは、優しい音がする。
初めて彼の演奏を聴いたのはこの夏、4年ほど前から彼が定期開催している”Vocal Crossing” (ヴォーカル・クロッシング)というライブ。その日東京は雨模様だったけど、仕事帰りらしき若い女性客やカップル、ときおり熟年カップルが三々五々集まって、客席はほっこり、華やいだ気分。ライブというより知り合いのパーティにまぎれ込んだような、フレンドリーで気楽な雰囲気だ。

 歌と演奏が始まると、そのレベルの高さにまずびっくり。プロ歌い手3人の、その歌声の艶やかさ。ジャズ、ブラジリアンからユーミン、狩人の『あずさ2号』まで、おしゃれにさらっと歌いこなす。それをサポートする永田ジョージのピアノは、あくまでも歌を主役に立てながら、力強くて繊細で、会場全体を包み込むようだ。
「ミュージシャンって、自己表現したい生き物だと思うんです。自分を表現したいって、それはある意味エゴイズムですよね。でも僕のやりたい音楽はそこだけじゃない。まずはみんながリラックスできる、楽しめる場所であること。その上で、自分のカラーが出せればいい。良い場所で良い空気が流れていれば、僕も良い演奏ができる。〝俺の音楽を聴け!〟とか〝永田ジョージのピアノを聴いて下さい〟っていう気はまったくないんです(笑)。良い人と出逢うことで良質な音楽が生まれ、良い音楽があるところで人と人とが気持ち良く出逢える。そのサイクルの中に僕は生きているし、僕の演奏も組み込まれている。僕が存在する価値は一辺倒な自己表現にはなく、その場に合うベストな音楽を奏でることにあります」

 永田ジョージ、一見のほほんとしてるけど、話す言葉は知的かつ論理的。今まで会ったことのない種類のミュージシャンかもしれない。彼の正体を、今週のYEOは金曜日まで連日徹底調査します。お楽しみに!

  • 出演:永田ジョージ(ながた じょーじ)

    1976年フロリダ州に生まれ、日本・英国・米国の3カ国で過ごし18歳で帰国。クラシックピアノを4歳から始め、大学在学中からジャズピアニストとしての演奏活動を開始。卒業後は外資系IT企業に勤めながらライブを継続。2005年カリフォルニア州サンディエゴに2年間留学し、現地で唯一の日本人ピアニストとして活躍。2007年帰国後、東京での演奏活動を再開し、ジャズ、ボサノバ、ポップスと多ジャンルに渡るアーティストたちとのパフォーマンスを重ねた。2012年6月独立。独自の切り口でのジャズ&ブラジリアンをベースとしたアルバムをリリースしつつ、ライブペインティング、華道、演劇、舞踏、ファッションショーなど音楽以外の表現者とも積極的にコラボレーションを行っている。

    オフィシャルサイト http://www.groovepockets.com/

    “Shade” 発売中 (2016年6月1日発売) CD 2,000+税 GPME-0005 https://www.youtube.com/watch?v=hmqU8sUFWck

    【”Shade of Autumn” 永田ジョージ Solo Session】
    カリフォルニアでレコーディングしたソロアルバム”Shade”リリース後、ヨーロッパを旅して新たな音色を。神楽坂の名店The Gleeの艶っぽいスタインウェイピアノで、秋を感じる名曲をお届けします。
11月5日(Saturday) 13:00 at The Glee
    電話予約 03(5261)3124
ネット予約 http://theglee.jp/

    【Vocal Crossing-Route14-】
    2012年初夏からの定期開催イベント。澤田かおり、ギラ・ジルカ、伊藤大輔、3人のヴォーカリストの声を、ピアノと共に永田ジョージがサポートする。

    12月13日(Tuesday)at JZ Brat
    電話予約03(5728)0168(平日15:00~21:00)
    ネット予約 https://www.jzbrat.com/reserve/

     

    撮影協力

    池坊東京会館 http://www.ikenobo.jp/tokyokaikan/access.html

    JZ Bratオフィシャルサイト https://www.jzbrat.com/

    The Gleeオフィシャルサイト http://theglee.jp/

    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/