混沌とした心持ちで稽古場を後にする。
武蔵小杉行きのバスに揺られながら、休憩時間に於ける長塚圭史くんとの会話を反芻する。
「こうして君に言われて稽古場にやってきたわけだけど、長塚くん、劇団化っていうのはどういうことなのかな実際のところ?」
「創作の村ですね」
「しかしこれまでだってやってきたんじゃないのかね。これまで通りのプロデュース体制であっても創作の村だろう」
「いや、それはやっぱり、違うんですよ。頼まれて創るんじゃなくて、創りたくて創るんです。
そういう人ばかりが集まった創作の場を設けてみたかったんです」
「だけど結局は長塚くんの作品を上演するわけだろう?そうするとちょっと君臨が過ぎるんじゃないのかな?」
「別に僕の作品ばかり上演しなくたっていいんです。もちろんそれはそれでやっていきますけど、
他に何かをやりたいと言いだす人があって、それが興味深ければ、やろうって話になると思いますよ」
「君の世界観なしでも阿佐ヶ谷スパイダースって言えるのかい?」
「いずれは言えるんじゃないですか。まあ急いでいるわけではないんですよ。
とにかくまずは公演を立ち上げるために必要なことを、スタッフとか出演者とかの枠組みを抜きにしたところで、
全員で関わっていくんです。ははは」そう長塚くんは笑った。
なんだか煙に巻かれたようで、まだどうにもイメージが出来ないのだ!!

  • 出演 :阿佐ヶ谷スパイダース  あさがやすぱいだーす

    1996年、長塚圭史と伊達暁を中心に〈演劇プロデュース・ユニット〉として結成、「アジャピー・ト・オジョパ」にて旗揚げ。1998年より中山祐一朗が参加。2004年、長塚が第15回公演「はたらくおとこ」の作・演出にて第4回朝日舞台芸術賞などを受賞。2016年までに全25作品を上演。2017年5月、旧知の仲間がメンバーとして加入し、‹劇団〉化。2018年、オーディションを経た新メンバー加入。同年8月「MAKOTO」上演。

  • 公式ホームページ・http://asagayaspiders.com/

  • 【公演情報】 阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」
    作・演出:長塚圭史
出演:中村まこと、大久保祥太郎、木村美月、坂本慶介、志甫真弓子、伊達暁、ちすん、長塚圭史、中山祐一朗、藤間爽子、森一生、李千鶴

    東京公演:2018年8月9日(木)~20日(月)吉祥寺シアター
大阪公演:2018年8月25日(土)・26日(日)近鉄アート館
新潟公演:2018年9月1日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
    神奈川公演:2018年9月7日(金)~9日(日)KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
    まつもと公演:2018年9月29日(土)・30日(日)まつもと市民芸術館

    公演詳細について→ http://asagayaspiders.com/stage.html

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    文:葛河梨池

    小説家。葛河思潮社代表。虚構と現実を演劇的に旅することが可能な数少ない作家である。恐怖小説で人気を博した。近作に『小夜更方棘奇譚』など。現在は壮大な幻想小説の構想に着手している。長塚圭史の作品『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』や『あかいくらやみ〜天狗党幻譚〜』に登場した。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/