# 1 歌い手として母親として
『平和元年』 元ちとせ
- Magazine ID: 2933
- Posted: 2016.01.25
元ちとせさんは終戦70周年にあたる昨年、『平和元年』というカヴァーアルバムを発表した。コンセプトは、忘れない~繰り返さない”。『腰まで泥まみれ』『死んだ男の残したものは』『戦争は知らない』などなど、60年代から70年代にかけて生まれた曲たちは彼女によって新たな魂を吹き込まれた。その歌は今改めて、私たちの心に深くしみいり、揺さぶり、突き刺さってくる。昨年末、第57回レコード大賞企画賞を受賞した。
「2002年にデビューしてその夏、広島のイベントに出演したとき、空き時間に原爆資料館に行ったんです。そこで衝撃を受けました。平和な時代に生まれ育って、それまで全然、戦争なんて私たちには無縁なものだと思っていたんです。そんな事実があったことも知らずに大人になったつもりでいた自分がとても恥ずかしくて」
終戦60周年にあたる2005年、坂本龍一氏とコラボレーションでこのアルバムにも収録されている『死んだ女の子』を発表。原爆が投下された8月6日、坂本氏のピアノ伴奏のもと、広島原爆ドーム前での歌唱は大きな反響を呼んだ。
「ちょうど私も娘を産んですぐでしたので・・・・。歌を歌う人間として、ただ楽しい、華やかなものを伝えるだけでなく、深い思いを残したい。それから10年後の今、やるべき意味のある曲を集めたのが、今回のアルバムなんです」
反戦歌を歌うと、反戦歌手という色分けをしたがる人もいる。
「メディアによってはそういうコメントを求めてくる人もいますけど、私は歌い手として母親として、平和であってほしいと願うひとりでしかない。平和について、これからも少しずつ、自分で考えていこうと思っています」
-
出演:元ちとせ(はじめ ちとせ)
1979年鹿児島県奄美大島生まれ。2002年『ワダツミの木』でデビュー。
リリース後『100年にひとりの声』『その声は涙でできている』と讃され彼女の歌はまたたく間に大ヒット、社会現象となる。チーフタンズ、スライ&ロビー、ディープ・フォレスト、坂本龍一、松任谷由実など大物アーティストとのコラボも大きな話題となる。そして昨年発表したアルバム『平和元年』は企画コンセプトに賛同した吉永小百合が題字をプレゼントしてくれた。現在は生活の拠点を奄美大島におきながら、全国各地でのワンマンライブやイベントコンサートなど精力的に活動している。2月19日浜離宮朝日ホールにてライブを開催予定。オフィシャルサイト http://www.office-augusta.com/hajime/
ヘアメイク:村端ジン
スタイリスト:美馬尚子
衣装協力
OKURA http://www.hrm.co.jp/okura/撮影協力
ウララ http://www.hrm.co.jp/news/2015/11/post-518.html取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/