キャリアのスタートは18歳の頃。スタジオ・ヴォーカリストとして、CMやアニメ、テレビドラマの挿入歌を歌ったり、有名アーティストのバックコーラスをする仕事だ。でもその一方で、ひとりのアーティストとして有名になりたい、という切実な思いもあった。

「バックコーラスで全国ツアーに出てるとき、僕から5メートル先にフロントマン、つまりスターさんがいるんです。その方の背中を見て、いつか絶対あそこに立つ、と思っていました。頑張っていればいつか誰かが声をかけてくれると信じていたんです。でもある日バンドの先輩と飲みに行って、『いつかフロントに立つ』って言ったら、『いやいや結城ちゃん、今いる場所とフロントは、つながってないよー』って言われた。『アーティストになりたいなら、ストリートのほうが近道じゃないの?』って」

 求められていることを実現するのがスタジオ・ミュージシャン。自分のやりたいことを表現するのが、アーティスト。ふたつの道は交錯していなかったのだ。
 結城さんは早速、渋谷・東急プラザ前など街頭に立って、自作の歌を歌った。すると、

「3ヶ月くらいでテレビが取材に来て、レコード会社が決まってCDを出して、事務所も決まりました。エネルギーがあっても、出す方向を間違えているといつまでも夢は叶わないんだって、僕は知らなかったんですね(笑)」

  • 出演:結城安浩(ゆうきやすひろ)

    1977年2月25日埼玉県生まれ。1995年よりプロヴォーカリストとしてスタジオワーク、セッション、著名アーティストのサポートを経験。同時にシンガー・ソング・ライターとしてLIVE活動を行う。2007年に『ESCOLTA』のメンバーとしてメジャーデビュー。2010年からソロ・アルバムを発表し、3枚目の『月の海』(2013)はタワーレコード渋谷店クラシック週間チャート1位を獲得。3オクターブの音域を変幻自在に操り、ポップス、R&B、ジャズ、ソウル、ブルース、ロック、フォーク、クラシカルなど、ジャンルを超えたマルチシンガーとして活動している。現在はソロ、『ESCOLTA』の活動と並行して舞台音楽、作詞/作曲、プロアーティストのヴォイストレーナーなど活躍の場を広げている。
    現在2本のレギュラーラジオ番組〝FM湘南ナパサ〟78.3MHz「結城安浩のスローライフ」(毎週日曜日15:00~15:30)と、7/2~新番組〝すまいるエフエム〟76.7MHz「結城安浩のもくもくRADIO NIGHT」(毎週木曜日21:00~21:30)に出演中。

    オフィシャルサイト http://www.yukiyasuhiro.com

    LIVE TOUR 2015 Final

    7月4日 東京@TOKYO FM Hall 16時30分開場/17時スタートCharge;¥5000(税込・自由席)

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『BAILA』『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/