金鐘賞助演女優賞受賞
大久保麻梨子
- Magazine ID: 1553
- Posted: 2013.11.18
20年以上、フリーでインタビューをするなかで、私はひとつのルールを作ってきた。なるべく取材対象とは一定の距離を置く、ということだ。
よく「何千人と有名人に会っているのだから、友達、いっぱいいるでしょう」と言われるが、そんな理由でほとんどいない。目の前に現れた人に対して、読者の代表という立場で、安定した、清潔な心で向き合う。そこから引き出せるものがすべてだ、と思っていた。
だがこの『YOUR EYES ONLY』という連載に携わることになって、この連載はそれでは無理だ、と思うようになった。
ここに登場してくれるのは、単に何かをプロモーションしたくて出てくる人たちではない。新しく何かをやろうと一歩を踏み出す若い役者やアーティスト。もしくはベテランであってもまた何か新しいことをやってやろうと意気込む人たちばかりだ。
まったく新しいことをしようというとき、人は誰だって怖いし、誰だって夢にあふれている。
それをどうやって表現するのか。
その気持ちと一緒になるしかないではないか。そう思ったのである。
いったん一緒に感情を共にして、客観的に書く。そういうスタイルができないものか、と。
まったくメディアに出ていない人にとっては、ここにある文章が一つのプロモーション・ツールにもなる。しかしそれは生々しいものじゃなくてはならない。でなければ、マスコミの看板のもとにあるウェブの意味もなかろう。
そんなふうに考えさせてくれるようになったきっかけのひとつに、台湾に進出していった日本人女優・大久保麻梨子との出会いがある。
グラビアを中心に日本で活躍していた彼女が心機一転、彼の地で本格的な女優として頑張ろうと2010年に台湾へ渡ったいきさつは、最初の特集をもう一度振り返って読んでいただければと思う。一から中国語を覚えてそれで演技をするというのは並大抵の努力ではなかったろうし、日本とは違う芸能界のシステムに混乱する姿も折々見てきた。多くは書けないが、去年、日本で会ったときの彼女は、かなり落ち込んでいた。
その大久保麻梨子が、台湾のエミー賞と言われる金鐘賞に単発ドラマの助演女優賞を獲得したのである。
台湾のメディアからステージの上で泣きじゃくる彼女の姿がウェブ上に流れてきたとき、もらい泣きしたのは言うまでもない。
たまたま「ポートレイト専科」という写真イベントで台北にいた萩庭桂太は、彼女の写真をしっかり撮って、レッドカーペットを歩く直前までのビデオも回してきた。今週はそんなハギニワの奇跡的なファインプレーによる「YOUR EYES ONLY 大久保麻梨子の3度目の正直の現場」なのである。
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出演:大久保麻梨子
1984年9月7日長崎県生まれ。2003年にデビューし芸能活動を続ける中、2010年初めて一人3泊4日の旅行で訪れた台湾に一目惚れし、帰りの飛行機で台湾留学を決意。その半年後から台湾生活を始め中国語を習得し、仕事の拠点も台湾に移し現在、中華圏の広告、雑誌、ドラマなどで活躍中。夢は日本、台湾をつなぐ架け橋の様な人になること。
オフィシャルブログ(最新情報)http://ameblo.jp/marilog0907/
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取材・文:森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太