先日、アンジェリーナ・ジョリーが乳がんの遺伝性を憂慮して乳房を切除したというニュースが流れた。それを聞いて「そこまでしなくてもいいんじゃないの」と思った人も多かっただろうし、胸元にふくらみのないアンジーを想像してがっかりした人も多かったのではなかろうか。

 しかしどうやら、米国の遺伝子医学というのはかなり進んでいるようで、彼女のニュースで登場した「80%の確率」というのも単純に読み取れる数字ではないらしい。そこに言及するほど私には知識がないが、今週登場するこの美しい藤森香衣さんは、アンジーと同じく「乳がんになる可能性」を遺伝的にもっている可能性が高いという。

 ポートレートは2013年の1月に、フランスの有名写真家、エリオット・アーウィットが撮影してくれた写真を見に行った彼女を萩庭桂太が撮ったものだ。

「人の1年後ってどうなるかわからないものですね。この前の年、たまたま横浜市の職員に知り合いがいて『来年、フォト・ヨコハマ展をやるためにエリオット・アーウィットという人を呼んでパンフレットやポスターの写真を撮ってもらうんだけど、モデルがいないのでお願いできないかな』と言われたんですね。私、その名前を知らなかったのでハギニワさんに聞いたらすごい写真家だよ、とびっくりされました」

 その展覧会は「カメラ女子」を裏テーマにしていたらしく、結局、エリオット・アーウィットは彼女と、ヘアメイクの茂手山さんがカメラを構える姿を撮った。その隣りにいたハギニワは「オレだけカットされてしまった」と残念がった。

 香衣さんはその前年、2011年の秋に乳がんの検査を受けていた。

「2010年に仲の良かった友達が26歳の若さで乳がんで亡くなったんです。彼女は私に『検診は絶対に受けたほうがいい』という言葉を遺してくれていました。それで右胸にしこりを見つけたとき、すぐに検査したんです。でもマンモグラフィーもエコーも触診も、結果は異常なしでした」

 そこからまた1年。しこりはしこりのままだった。この写真が撮影される数カ月前の2012年の11月に、彼女は別の病院を受診することにした。

 彼女には不安があったからだ。

「祖母が乳がんだったからです。40~50代で片方やって、最終的には両方の乳房を切除しました。ガンには遺伝するものがあると聞いたことがありましたから」

 友人が亡くなったこともありすでに保険にも入っていた。彼女の中でその不安にはアンジーと同じ、小さな確信があったのかもしれない。

  • 出演:藤森香衣

    モデル。1976年東京都生まれ。11歳からモデルを始め、広告、CM、テレビを中心に活動。CM出演は70本を超える。テンカラット・プリューム所属。
    http://tencarat-plume.jp/models/details/hujimorikae.shtml
    藤森香衣オフィシャルブログ「白花の薫り」
    http://ameblo.jp/kae-fujimori/day-20130404.html

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太