ちすんは2018年夏、長塚圭史率いる劇団『阿佐ヶ谷スパイダース』のオーディションを受けた。なんで今さら? と思うけど。
「ずっと、年に1度は舞台に出たいって思っていたんです。でもなかなか機会がなくて、たまたま見つけたのが劇団員募集のツィッターでした。事務所に相談したら、長塚さん主宰の劇団なら、受かればハクがつく。やってみろって(笑)」
 劇団員のオーディション、いったいどんな選考をするのだろう?
「最初は自己PRの用紙を書き込んで、あと『におい』をテーマに400字程度の作文です。『これ、何試されてんのやろ?』って思ったんですけど、そのときぱっと思いついたこと、書きました。2次は8人ずつでなにかゲームのようなことをして、あとはお芝居しました。その後に最終選考があって、事前に送られてきた台本をベースに、お芝居して」
 見事、合格。そのお披露目が、前回YEOでも取材した舞台『MAKOTO』だった。
「私がオーディションを受けたのは35歳のときだったけど、長塚さんはこのくらいの年齢の人間を獲るつもりはなかったらしいって、あとから聞きました。若い子を入れて劇団全体をフレッシュにしようと思っていたらしいんですけど、30代半ばの女の執念が伝わったのかもしれませんね(笑)」
 その後も長塚氏の舞台に起用されたり、他の舞台からも声がかかったり。なんだか忙しくなってきた。
「30代になってから、どうしてなんでしょうね。20代の頃よりも今のほうが、ちょっとこう、前向き。しかもちょっと、力が抜けた感じは自分でもしています。
 今思うと20代の頃は、仕事したいのになかなか思い通りにはいかなくて、ドラマ出たい、映画出たい、バイトも『なんでこんなん、やらなあかんねん』とか、こんなはずじゃなかったってすごい思ってました。周りが見えていなかったし、顔もたぶんキツかったと思う。実家に帰ったときもよく、『眉間にシワ寄りすぎてる』って。友達にもそう言われたし。だから20代、明るくなかったと思います。
 それが30代に入ったら、現実を受けいれるようになりました。思い通りにいかないからイライラしてたんですけど、『そうならないんだから、イライラしても仕方ないじゃん』って。うまく説明できないけど、ちょっと気持ちがふわっとしました。視野が広がって、周りが見えるようになったのかもしれません」

[撮影協力・PGMゴルフアカデミー銀座 ] http://www.pacificgolf.co.jp/indoor/