チョーク・アートの教室に通い出し、ドハマリしたものの、すぐにプロになったわけじゃない。翌年Moecoは芸能活動を一時中断し、ニューヨークへ向かった。
「〝何のために?〟って聞かれると、答は〝人生勉強〟ですね。もちろんアートを勉強したかったし、芸能活動も続けていたので歌やヴォイストレーニングやダンスのレッスンに通ったり、ブロードウェイの舞台を観たり。それまでずっと事務所というものに守られていたので、1回その輪から抜け出して、自力でやってみたかったんです。それまですべてマネジャーさんに任せていたので、何ひとつ自分で決めることができなかったけれど、ニューヨークでは語学学校に通いながら、新しい友人に聞いたり友人の友人のツテをたどりながら、毎日するべきことを自分で決めました。大変でしたけど、チャレンジしてみたい、という思いがすごく強くなった時期なんです」
 1年しかニューヨークにはいられなかったけれど、その1年はMoecoを成長させてくれたという。
「日本にいるときは、〝人見知りなんです〟って言ってしまえば、社交的じゃなくてもなんとかなりますよね。でもニューヨークで〝シャイなんです〟って言っても通用しない。ネガティブな意味に受け止められてしまうんです。向こうでは自分のこと、ちゃんと伝えなきゃいけないし、伝えたいし、相手のこともたくさん聞きたいし。そうやっているうちに、自分のシャイな部分が知らない間になくなっていました」
 おかげでニューヨークには、今も親しくしている友達がいっぱい。
「ニューヨークに帰ると〝おかえり!〟って言ってくれる友だちがたくさんいて、それは私の財産だと思います。去年と一昨年、ニューヨークでも個展を開いたんですけど、その経験があったからこそ、実現したのかなって」
 チョーク・アートは、日本に戻ってからあくまでも趣味として続けていた。SNSで、限られた友人だけが見られるように設定した上で、自分の作品を公開していた。
「そのうちに、それを見た友人から、お店の看板を描いてほしいとか、作品を飾らせて欲しいというリクエストが来るようになりました。でも別にプロではないので、お金はもらえない。〝その代わりにごはんおごって!〟って、そういう感じでした」