まずは、チョーク・アートの基本から。
 チョーク・アートは、黒板を作る作業から始まる。
「MDFボードという人工の板に専用の塗料を塗って作ります。コロコロで塗るとすぐに乾くんです。ボードはホームセンターとかで売っていて、好きなサイズに切ってもらえます。塗料は黒だけじゃなくいろいろな色がありますけど、私は黒が好き。黒に描くというところが、チョーク・アートの醍醐味だと思います。あと、海外だと床に描いたり、いろいろな形態がありますね。描くのは学校で使う白墨チョークを使うこともありますけど、私はちょっとオイルが混ざったような、クレヨンのような質感のパステルを使います。愛用しているのは、96色セットのパステル、全部の色を使います」
 描いた線は、指の腹を使って黒板に馴染ませ、必要に応じてグラデーションをつける。油絵や水彩画のようなぼかしや色の配合は、すべて指の仕事だ。
「ですから指先の体温が高いほうが、色が伸びるんです。私は手が温かいらしくて、よく伸びるんですけど、でもそれは作品の出来不出来に関係ないですね(笑)。大事なのは筆を使わずにすべて指で直に描くということで、その分、自分の気持ちを込めやすいと思います。いつも描きながら思い出すのは、『鶴の恩返し』の機織りのシーンで、自分の羽根を1本ずつ抜きながら布を織り出すみたいに、自分の何かが少しずつ作品に入り込んでいくような感覚があるんです」