映画『宝物の抱きかた』を作るまで、榎本桜さんはどのように育ち、どんな風に今まで過ごして来たのでしょうか。

「子どもの頃は、ばあちゃん子でした」

 千葉県佐倉市で生まれ育った桜少年。お祖母さんの言いつけを守って6時までに夕食、お風呂に入って9時には布団に入るという毎日。ただし金曜の夜だけは特別でした。『金曜ロードショー』が終わる11時まで起きていることが許され、お父さんと一緒に夢中になってテレビを観ていたそうです。当時観ていた映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ジュラシック・パーク』『ロボコップ』『ターミネター』……まさにザ・ハリウッド! 子どもも大人も無邪気に映画を楽しんでいた時代ですね。

 やがて高校生になった桜君は「注目されたい」「認められたい」という欲求が募り、学校を中退して東京で暮らし始めます。役者を目指して養成所に通ったものの、なかなか思い通りにいかない日々。そこで「自由な環境を手に入れるためにお金を貯めよう」と決心しました。
 22歳で新宿のホストクラブに勤め始め、1ヶ月でなんとナンバーワンに! 2年間で資金を稼ぎ、自分のお店を持つまでになったとか。ちなみにお店での名前は何でしたっけ?

「『太陽』です。歌舞伎町の夜を照らす太陽になろう、と真剣に考えていたんですよ。といっても勤めていたのは日の出営業(早朝営業)の店でしたけど(笑)」

 お金も貯まって、いよいよ自由にできる! と思った矢先に届いたのは、大好きなお祖母さんの訃報でした。

「長く患っていた祖母が亡くなったときに“よかった”と思った自分に驚きました。それを母に話したら『自分の好きなことをする時間をもらったんだよ。これからは好きなことをしようね』って。そのとき、自分が本当に好きなことは何だろう、とあらためて考えました」

 考えるうちに、自分がしてきた経験が一つに繋がり、映画を作ろうという結論に至った榎本監督。しかしここから、映画『宝物の抱きかた』が観客の目に触れるまで、長ーい年月を費やすことになるのです。

  • 出演 :榎本桜 えのもと さくら

    映画『宝物の抱きかた』監督・主演。劇場を中心に俳優として活動していたが、2013年頃からインディペンデント映画やドラマなどの露出が増える。活動拠点にしている劇団チキンハートは旗揚げから4年半にして1公演で3000人を動員する。

    映画公式HPhttp://takaramono.net/

  • 映画『宝物の抱きかた』
    2017年公開。現在上映中。著名人からも好評で、口コミで延長上映を重ねて、吉祥寺ココマルシアターにて6週目という異例のロングラン。高崎映画祭『監督たちの現在−進取果敢な人々−』特別上映。第3回新人監督映画祭ノミネート。第三回岩槻映画祭招待作品。

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    取材/文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画、コンテンツ開発のほか、企業のPR誌を定期的に編集・制作している。
    Facebookページ(不定期更新)https://www.facebook.com/mi.company/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/