程嶋の父親は、明治大学BIG SOUNDS SOCIETY ORCHESTRAのコンサートマスターをやっていたアマチュア・ミュージシャン。小さな頃から浴びるようにジャズを聴いて育ち、〝大人になったらこれをやろう〟と心に決めていた。父の勧めで早稲田大学のサークルでジャズを演奏することを目標に設定し、中学生の頃から猛勉強を開始。現役で早稲田に入学し、初志貫徹、見事ジャズ研のメンバーとなった。
選んだ楽器は前述の通り、コントラバス。
「身体の小さい私にとっては、楽な楽器ではありません。でも高校生の時初めて師事した先生から〝楽器は力で弾くものじゃない〟と教わりました。ここ数年はまたクラシックの先生にも師事して、肩甲骨を使って楽器を本当の意味で響かせて弾く技術を学び直しています。コントラバスはそもそも、自分の思い通りの音程や音量で弾くのが、すごく難しい楽器なんです。でもそこをきっちり学ばないと、良い演奏はできない。もちろん、身体作りも徹底してやっています。腕の筋肉はけっこうすごいですし、体幹も鍛えています。もっと小さな楽器だったら、ここまで続けていないかもしれませんね」
 とはいえ、音楽で身を立てるのは難しい。程嶋は大学卒業後、音楽の途を一時期断念。外資系コンサルティングファームに就職し、バリバリのエリート会社員の道を歩んでいた。
「当時はITバブルの時代で、めっちゃ調子に乗ってました。資本主義の申し子みたいでしたね。IT業界は全員が天狗になっていましたから。収入も多くて〝パパより私のほうが稼いでるわ〟みたいな。相当感じ悪い子だったと思います(笑)。企業の戦略コンサルティングが主な仕事で、私が扱っていたのはナレッジマネジメント。企業の知的資産の使い途を考えたり、業務改善とかオペレーションストラテジーと言われる領域の案件を中心に3年くらい、働きました」
 その後ベンチャー企業へ転職し、コンサルタントとして新しい領域にも挑戦していたころ、人生で最初の高波にぶち当たる。2008年、リーマンショック。一気に仕事はなくなった。程嶋は早々にこの業界を見限って早期退職し、ビジネススクールに入り直した。

  • 出演 :程嶋日奈子 ほどしま ひなこ

    1982年、神奈川県藤沢市生まれ。4歳からピアノを、15歳からクラシックコントラバスを学び、早稲田大学モダンジャズ研究会に加入。大学卒業後、外資系コンサルティングファームで3年働いた後、退職。ジャズベーシストとして活動を開始した。ジャズビッグバンド・コンボはもちろん、クラシックやポップスなどジャンルを問わず多くのシーンで活躍中。

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/