人生に無駄はない。そう思うことは他にもある。
「キャスターをやっていて、1番好きなのは経営者にインタビューすることでした。第一線の経営者の考えとか戦略とか経営哲学を、貴重なお時間をいただいて伺えるんですから! 直接話を聞いて、みんなが知りたい情報を引き出してきた、という自負があります。多分この年齢で、そうそうたる顔ぶれの経営者にこれだけの数お目にかかっている人は、なかなかいないと思います。その積み重ねが自分の知見になっていて、今、社外取締役としての活動の基礎になっていると思います」
1000人におよぶそのインタビューをざっと振り返って、わかったことがひとつ。
「経営は人だな、ということです。その人となりに魅力がある経営者の会社は、やっぱり伸びるんです。人に人が付いていくか。人は、報酬の対価として働きますよね、基本的には。でもプラスアルファの部分で、この経営者についていこう、この人のために頑張ろう、この会社を一緒に大きくしようと思えるかどうか。お金じゃないところのモチベーション、そのプラスアルファが大きい会社は、どんどん成長していくんです」
 江連自身も同様に、魅力的な人物から多くを吸収してきたという。
「キャスターをしているときには、現場を取材している記者とか、日経新聞だったら編集委員や論説の方、本当に記事のことをわかっている人に直談判して教えてもらいました。それが1番早いし、確実なんです。今、社外取締役としても私は、この人、と思ったら積極的に教えを乞います。外食産業とかコンサルティングの分野ではまだまだ初心者なので、もちろん自分で日々勉強は続けていますけど、最短で何かの知識を身につけるには、それだけじゃ間に合わないことも多いんです。この人すごい、と思ったら、絶対にこの人に教わろう、この人についていこう、この人を絶対つかまえようといつも思っています(笑)。自分はスカスカのスポンジみたいなものですから、そこには良質の情報や知識を入れたいじゃないですか」
でも、この人すごい、と思わせるような人が、すぐに教えてくれますか?
「はい、教えてくれるまで頑張ります(笑)。どうやってその人の懐に入っていくか、その人の言葉をどうやって引き出すか、長年のインタビューでテクニックみたいなものは磨いて来ましたから(笑)。準備して調べて勉強して、信頼してもらえるための努力は惜しみませんし、さらに共通の話題がひとつでもあるように、趣味も資格もいっぱい増やしてきたので、自分の中に引き出しはいっぱい持っています」
 スペックはフル装備、ってことですね。
「同時に、自分を大きく見せる必要って、もうないんじゃないかなって思うこともあります。ビジネスの世界には、自分より頭の良い人しかいないんです。こんな頭の良い人たちがいるんだ!って、毎日思いながら仕事をしているので、もう、素直な気持ちで〝教えて下さい〟って頭を下げる、それしかないのかなって(笑)」

  • 出演 :江連裕子 えづれ ゆうこ

    1977年生まれ。経済キャスター。東証一部上場 株式会社グルメ杵屋社外取締役。株式会社エスネットワークス社外取締役。TBSニュースバードキャスター、KPMG税理士法人を経て日経CNBCのメインキャスターを9年務める。現在は経済セミナーの司会やモデレーターとしても活躍。ラジオNIKKEI『ザ・マネー』(毎週月~金曜日15:10~16:00)の木曜日に出演中。

    セント・フォース プロフィールhttps://www.centforce.com/profile/t_profile/ezure.html

    オフィシャルブログ https://ameblo.jp/ezure-yuko

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/