レースのことなんか何も知らないインタビュアーの素朴な質問に、千代は笑顔のまま、ていねいに答えてくれる。超ハイテクなヘルメットの構造、スポンサー名がたくさんついているウエアの秘密、300キロという速度で走ると世界はどう見えるのか、などなど。
「ヘルメットをかぶっているし、車の中にいるし、レーシングドライバーがいったいどんな人間なのか、知っている人は少ないですよね。僕らがどんなに頑張っていても、馴染みのない人がレースを見たら、何をやっているのかさっぱりわからないのかもしれない。高度なことやっているんだけど、それが細かすぎて、伝わりにくいんです。知れば知るほど、面白くなるんですけどね。だからこういう機会にレースのこと、僕らドライバーのことを知ってもらって、多くの人にレースに関心をもってもらいたいと思うんです」
　たしかに。運転しているのがこんなイケメンだとわかっていたら、見る目はだいぶ、違ってくる。ここにたどり着くまでの話を聞いた今では、ギリギリの崖っぷちを走り抜けてきた千代のことを応援したくなってくる。
「土壇場に強いとか逆境に強いとか、よく言われます。でもそれだけじゃなくて、僕はレースの盛り上げ役になりたいんです。ただ単に走るのではなくて、レースの見せ場を作りたい」
　走るだけでも大変そうなのに。そんなこと、できるんですか？
「常に意識はしています。テレビになるべく長く映るように派手な走りをするとか。ちょっと砂ぼこりをあげてみたり、後ろのタイヤをちょっと滑らせて、スライドさせながらコーナーを加速してみたり。けっこうサービス精神旺盛なほうだと思います（笑）。ファンの方が喜んでくれるのが1番ですから」
　さすがは、コミュニケーション上手。車のこと、レースのこと、すっごくわかりやすく教えてくれた。で、プライベートなことですけど、好きな女の子のタイプは？
「えーと、そういう質問されるの、初めてだな、えーと････」
　急にボキャブラリーが減るみたい。じゃ、車で言うと、どんな子がいい？
「マーチ、かな。みんなに愛される、みたいな（笑）」