どうやら昔の弁士と今の弁士では、大分違ってきているらしい。ここで夫の松田クンに話を聞くと・・・・、
「今の弁士さんは、自分を見せたいんです。無声映画が好きで弁士になったわけじゃなく、役者をやっていたり、落語やお笑いの世界に行きたいけどそっちは厳しいので、弁士だったら芸人になれるんじゃないか、とか。だから映画を見せるより自分を見せたい。
 でも僕らは、昔の良い映画をみんなに見ていただきたいんですよ。昔の映画が今の映画より劣っているということはない。小説なんかでも、森鴎外や夏目漱石が今の小説より劣っているかっていったら、けしてそういうことはありませんよね。高性能カメラとCGがないだけで、演出方法とか映像美術は100年前にほぼ完成されています。スゴイ映画がいっぱいあるんです。だから弁士さんのキャラクターに依存した形での上映会にはしたくない。でも今の若い弁士さんたちにそれを言っても、話が通じない。どうしたら自分がウケるかということに一生懸命で」
 そんな中での、ハルキの覚醒だった。
「じゃあ私がやってみようって、思いました。せっかく昔の良い映画があるのだから、その良さをちゃんと伝えられる弁士に私はなろう。半分は意地もありました。それに、やりたかった1番の理由は、私は彼と一緒に仕事がしたかったんです。彼は松田春翠の息子なのに弁士の才能はなくて(笑)、でも昔の映画とか俳優さんについての知識はすごいし、よきアドバイザーであり、厳しいことも言ってくれる。意見が合わないこともありますけど、その時は私も引きませんけど(笑)。でも、一緒に仕事がしたいんですよ」

  • 出演 :ハルキ  はるき

    会社勤務を経て、2005年より無声映画公演のスタッフとして活動を開始。公演プロデュースも担当する一方、16㎜映写機・伴奏音楽のオペレーションを担当。映画説明(活動写真弁士)の習得に努め、2011年7月、活動弁士としてデビュー。2012年1月より2013年1月まで無声映画鑑賞会に出演。2013年7月「活動弁士 ハルキによる無声映画公演」をプロデュースするオフィス・アゲインを夫の松田豊とともに設立。

    【公演情報】
    10月21日(土)午後5時開演 花畑記念庭園・桜花亭 『瞼の母』
    11月2日(木)午後7時開演 岡谷スカラ座『ロイドの要心無用』 ピアノ演奏:新垣隆
    11月5日(日)時間未定 川越スカラ座 『散り行く花』 ピアノ演奏:新垣隆
    上映会情報はHPに掲載中。

    HP http://www.office-again.net/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/