もうひとつ、言っておかなくちゃいけないことがあって。そう長沢裕が切り出したのは、舞台降板という忘れられない経験だった。
「昨年12月、宅間孝行さんの舞台に受かったんです。いざ稽古が始まると、ダメ出しの嵐、集中砲火を浴びているように感じました。なにしろ舞台は初めてだったので、自分の台詞さえ覚えておけばいいのかと思っていたら、どうやらそれではダメだったらしく。しかもけっこう重要な役で、最後のシーンで泣くはずだったのに、どうしても泣ける気がしなくて。先輩の役者さんが〝この世界、みんなやりたくてやっている人ばかりなのだから、自分の口でやりたいと言えないのだったら、もうやめるべきだと思うよ〟って、優しくも厳しく言ってくれたんです。怒られすぎて、1度は〝続けます〟って言ったけど、もう1回問い詰められたときに〝それでもやりたいです〟とは言えなかった。情け無いです」
 ここでもやはり〝腹が決まってないからこういうことになるんですよね〟と、自虐モード。
「人のこと知りたいし、自分とも向き合いたいし、だから演技やりたいんです。どちらかというと、演技がやりたくてこの世界にいるんです。地元に帰って銀行員か公務員になって余暇で畑するか、本当に農家になっちゃうか。芸能界なんて無理に決まってるし。そう思っていたのに今ここにいるのは、演技がしたいから、なんですよね。あー。でも」
 やりたい。やれない。私でいいの? 私がいいの? でも私って、何者? 本当は何がやりたいの? 人生の問いには正解がないから、頭の中がグルグルで、悔しくて、だから目には涙が浮かぶ。
「自分でつかみ取ってきたというより、人のおかげだったり流れでここにいるのかもしれない。今ここにきて、そこを問われている感じがします」

  • 出演: 長沢裕 ながさわ ゆう

    1993年生まれ。福島県出身。2016年、立教大学在学中に『ZIP!』(日本テレビ)6代目のお天気キャスターに就任、2017年3月で終了。今後も『ZIP!』のショービズ担当リポーターとして出演するほか、『趣味の園芸 やさいの時間』(NHK Eテレ)、『福島まるごとライブ ヨジデス』(KFB福島放送)のレギュラー出演が決まっている。
    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/yu-nagasawa/

    HAIR&MAKE:清遠 鮎美 Kiyoto Ayumi (Be..Go)

    衣装協力 IPSÉ http://www.ipse-official.com/

  • YEOからお知らせ:YEO専用アプリ

    このYEOサイトにダイレクトにアクセスするためのスマホ・タブレット用の無料アプリです。
    とてもサクサク作動して、今まで以上に見やすくなります。ダウンロードしてください。
    iOS版 https://itunes.apple.com/us/app/yeo-xie-zhen-ji-shi-lian-zai/id1188606002?mt=8

    Android版 https://play.google.com/store/apps/details?id=com.alphawave.yeo_android&hl=ja

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/