『新ロイヤル大衆舎』が誕生するきっかけを作った、言い出しっぺはこの人、大堀こういち。人当たりのいい、優しいオジサマっぽい風貌だし、山内圭哉や福田転球からは〝演劇界の重鎮〟なんて呼ばれてる。長塚圭史曰く「ナンセンスコメディをやっていた人だから、独特のたたずまいがあって、荒唐無稽なアドリブとか、どこからあんなこと考えつくんだろうっていう思考回路を持っている」とか。舞台だけじゃなく映画もテレビドラマもCMにも登場していて、いい味出してくれるシブい俳優だ。
 で、もうひとつの顔が、このフォークシンガー小象(しょうぞう)。ライブ本番ではウェービーなロングヘアにサンバイザーとサングラス、サイケなプリントシャツにベルボトムのジーンズ。あやしい描きヒゲでギターを抱え、日本各地でライブを展開中だ。想定外の美声とギターテク、さらには絶妙ななりきりトークで人気上昇中らしい。
「もともと伊勢正三さんが好きで、だから〝しょうぞう〟なんです。メロディアスで、ちょっと変な歌詞で、カッコ悪い感じが好きなんですよ(笑)。2000年頃から、現・宇宙レコードの小林顕作さんとフォークデュオ『羊』っていうのをやってまして。その後テレビのレギュラー番組で作った曲が貯まったので、小さいところで単独ライブを始めたんです。前はちょっと片手間にやる程度だったんですけど、最近やっとお客様が来てくれるようになって (笑)。これからは俳優業とフォークシンガー小象と、ふたつちゃんとやっていこうかなと」
 この激しい振り幅は、長いキャリアのたまもの。30年ほど続いている俳優人生の間には、うまくいかない時期もあったそうで。
「劇団を離れて、ひとりでやっていた時期もあります。ひとり芝居でコントやっても、お客さんが入らなくてね。でも年に1回か2回、自主公演をやっているから、ギリギリ自分は俳優なんだって自分に言い聞かせてきた。辞めてもよかったんだけど、俺の場合、辞めドキがわからなかった。その後、温水洋一さんとふたり芝居をやるようになって、そこからちょっとずつ、演劇の現場に戻ってきたんです」
 そんな経験を重ねてきたベテランにとっても、この『新ロイヤル大衆舎』は新たな冒険。
「見たことがないことがやれる、それが新鮮だよね。今は大劇場でそれなりの方々を集めてやれば、興行としては成立するのかもしれないけど、新鮮さがないでしょう? 目先のことばかり考えないで、もうチョイ先を見て、やりたいよね。今回はそもそも僕の、小銭を稼ごうというイヤらしい思いつきから始まったはずだけど(笑)、結局は純粋に面白いものを作ろうっていうところに行きついてしまった。まあね、それだけスゴイものになると思いますよ」

  • 出演: 大堀こういち(おおほり こういち)1963年生まれ 宮城県出身

    ホームページ  http://office-psc.com/profile/ohori_kouichi/

    撮影協力: ZINC Promotion http://music.geocities.jp/zinc_asakusa/

    公演情報 :『王将』

    作/北條秀司 構成台本+演出/長塚圭史 音楽/山内圭哉 2017年4月27日(木)~5月14日(日) 下北沢『小劇場 楽園』にて 3部作(1部13st/2部11st/3部11st 計35ステージ)チケット一般発売2月25日(土)10:00~
    問い合わせ先 : 新ロイヤル大衆舎   http://shinroyal.com/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/