次々と不幸な出来事に襲われた蒲生麻由。だけど彼女はもともと、そんなにヤワな人間ではなかった。
「多少悪いことが起きても、そこがどん底だと思ったら、這い上がればいい。そう思って頑張ることもできたんです。でもそのときは、床がどんどん下がっていくみたいな。え?まだ下がるの?って思うくらい、どん底が底なしでした。踏んだり蹴ったりって、こういうことを言うのかなって」

 そこから約1年余、もがき苦しんだという。
「親に心配をかけたくなかったので、その間ずっと、親友に支えてもらっていました。心の中を吐き出して、それを受け止めてもらっていたんです、何度も何度も。でもとうとうある日、彼女からこう言われました。『私はいくらでも麻由の話を聞いてあげられるけど、でも、自分しか自分を助けられない。最終的に麻由を救えるのは、麻由だけなんだよ。だから私には、これ以上のことはできないからね』って。そのひと言で目が覚めたんです」

 目が覚める前の自分を、蒲生はこう分析する。
「悲劇のヒロインでした。負のスパイラルにハマってしまって、抜け出せなくなっていたんです。なんで私だけこんな思いをしなくちゃいけないの? と不運を嘆き、たくさん周りのことも責めたし、自分のことも責めていました。自分ではもう立ち上がれないから、誰かが手を差し伸べてくれないか・・・・。ひっくり返った人生をもう1度ひっくり返して、元通りにならないかと。でも、自分を救えるのは自分だけ。っていうことは、え! 私なの? みたいな(笑)」

 そこで思い立ち、当時住居のあったロスアンジェルスへ。

「この2週間、まずは自分でやってみようと思ったんです。自分が好きな場所で好きなことをして、いっぱい本を読み、自分と向き合う時間を持ちました。毎日、サンタモニカのオーシャンストリートのベンチに座って、夕陽を眺めながら、いろいろなことに思いを巡らしました。このどん底の1年を振り返り、これからどうしたらいいのか・・・・。そんなことを毎日繰り返していたら、スコン、と何かが抜けた気がしました。
 人生何が起こるかわからない。絶対に変わらないものなんて、ない。だったら何のために生きるんだろう? そう思い、立ち上がれないでいた私の目の前に、絶対変わらないものがあることに気づいたんです。太陽は毎日沈むけど、次の朝にはまた昇ってくる。そのことにすごく救われたんですよ。毎日、明日は来るんだって。
 だったら、過去に囚われて毎日涙を流している場合じゃない。できるだけ笑って生きていくために、また人生ゼロからやり直そうと思えた。なんか、吹っ切れたんです」

  • 出演:蒲生麻由 がもう まゆ

    1982年3月16日生まれ。埼玉県出身。女性ファッション誌『プチセブン』『ViVi』の専属モデルとして活躍後、『仮面ライダー響鬼』をはじめ特撮シリーズで女優としての活動の場を広げ、その後、TBSの連続ドラマ『ハタチの恋人』、映画『少林少女』(2008) 『沈まぬ太陽』(2009)『サヨナライツカ』(2010)など、数々の映画、TVドラマや広告に出演。更にフルマラソンやトライアスロンにも挑戦してきたことでライフスタイルにも注目されてきた。
    ブログ http://ameblo.jp/mayu-gamo/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/