「芳」と書いて「かほ」と読む。クラシックで雅びで、素敵な名前だ。父方の祖父が土村芳香という名の画家で、そこから一文字もらったという。

　出身は、岩手県盛岡市。彼女宛のファンレターの中には、東日本大震災を経験した彼女に向けて、『元気をもらっています』というメッセージが込められたものが少なくない。

「実家に戻る途中、新幹線の中でした。仙台駅を過ぎたあたりで揺れてきて、新幹線が止まったのがトンネルの中でした。そこから約９時間、ずっと中にいたんです。宮城と岩手の県境あたりだったと思います。電波も届かないので、何がどうなっているのかわからないままでした。電気が止まったのでとても寒かったのを覚えています」

　救助されて一泊して、次の日には手配されたバスで家に戻ることができた。それからの５年は、彼女にとっても一歩一歩進む、大切な年月となった。

　俳優を目指したのは、高校卒業を前にした頃。〝自分がやりたいのは何だろう？〟と考えたとき、幼い頃、子ども劇団に所属していたことを思い出したという。

「本番の日の劇場ロビーにはお花がいっぱいあって良い香りがしたとか、お化粧してもらってお芝居するのがうれしかったとか、そういうことしか覚えていませんけれど、とにかく楽しかったことが忘れられなくて（笑）」

　きちんと演技を勉強したくて、選んだのが京都造形大学映画学科俳優コース。学ぶだけでなく、映画デビューを飾ることもできた。

「学生とプロの方たちが一緒になって１本映画を撮るという企画があり、『弥勒－MIROKU－』という作品に出していただきました。ありがたいことに学校を出てからその作品が自己紹介替わりにもなって、今の事務所に入ることができたのだと思います」