生まれる時代と場所は選べない。それは運命だ。だけどそこから先は、自分次第。「今あなたがそこにいるのは、10年前のあなたが選んだ結果だ」という言葉がある。別に選んだ憶えはない、と反論する人はいるかもしれない。でも毎日の行動や無意識の選択が積み重なって、今のあなたはそこにいる。別の道に進む努力をしていたら、どこか別の場所にいるはずだし、とりあえず頑張ってみたから、ここまでたどり着いたのだ。
 江辺香織が今いる場所は、まさに彼女自身が選び取ったもの。彼女はプロのビリヤード・プレイヤーだ。人に教えるレッスン・プロとか試合で闘うトーナメント・プロではなく、トリック・ショットやさらに難しい技を見せる〈アーティスティック・ビリヤード〉のプレイヤー。女性では日本でただひとり、いや世界でもただひとり、かもしれない。
 それでいてこのルックス。〝美しすぎる○○〟という形容詞にはそろそろ飽きてきたけど、彼女はこの美貌も生かして、ビリヤード・ブームを日本に巻き起こそうと考えている。
「今、日本でもビリヤードが流行ってきているんです。先日も銀座では満台で、すぐにはプレイできなかったほどです。もともとイギリスでは国技みたいなものだし、アメリカでもカジュアルに楽しむ人がいっぱいいます。中国や韓国ではとっくにブームで、すごいプレイヤーがいっぱい出てきているんですよ。日本でも、もっとみんな楽しめばいいのに」
 でもビリヤードって、カッコイイのはわかるけど、そう簡単に手が出ない。っつーか、そもそも入り口が見つからない。江辺香織の場合、いかにしてビリヤードに目覚め、プロになり、なぜさらに先に進もうとしているのか。今週のYEOが金曜日まで5日間かけて、解明していきます。読んでいるうちに、球を撞きたい気分がどんどん盛り上がるかも。今のうちに金曜日の夜の台、予約しておきますか?

  • 出演:江辺香織(えべ かおり)

    1984年生まれ。兵庫県出身。2006年12月JPBAのプロテストに合格、史上最年少プロの記録を更新した。

    Facebook page  https://www.facebook.com/ebekaori.official/

    ヘアメイク&フォトスタジオLuff  :本多将人

    撮影協力:

    東京ビリヤード倶楽部 http://www.tokyobilliardsclub.com/index.php

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/