〈なりたいモノ〉がある人の前には、必ず超えるべきハードルが出現する。女優志願の上原実矩の前には、オーディションという壁が立ちはだかった。

「子役事務所を辞めて、中学2年のとき女優になるため、今の事務所に移籍しました。内心、それだけで女優になれたような気分だったんですけど、甘かったです。どこにいてもやっぱり、仕事は自分の力で取ってこなくちゃいけないんですよね。でもそこからしばらくお仕事が決まらなかったんですよ。オーディションに行っても毎回落ちて、落ちて、毎回〝あなたは必要ない〟って言われているような。そんなこと、子役時代から経験しているから慣れているつもりだったんですけど、落ちるとやっぱり〝あ、必要ないんだ・・・・〟って。そろそろ受からないと、と思っていたところで、やっとひとつ、決まったんです」

 それが深夜ドラマの『放課後グルーヴ』(TBS 2013年4月~6月)。

「現場では厳しく指導されたりもしましたけど、すごく楽しくて。そこでやっぱり、ちゃんとこの仕事で食べていきたいという意志が固まりました」

 昨年はオーディションを勝ち抜いて、対照的なふたつの役を演じることができた。ひとつは映画『暗殺教室』。三つ編みヘアにメガネをかけた、マジメな女の子。もうひとつは映画『ガールズ・ステップ』。金髪でメイクも濃いめ、言葉遣いも悪い不良娘。

「オーディションには、なるべく色のつかないフラットな服装で行き、同年代の役のときは制服で行くことが多いですね。でもまさか自分が、金髪の不良少女役をいただけるとは思っていなくて、若干パニック、みたいな。だって金髪のウィッグをつけたとき、全然似合っていなかったんですよ(笑)。でも撮影のときには自分の髪を金髪に染めて、楽しかったです」

 最近は以前より、オーディションに受かるようになってきた。

「重たくてドロドロしている作品も好きですけど、コミカルな、台詞回しが軽妙な作品が好きです。ばばばばって言い合う中でちょっと間を取ったりして、笑いを取るのも好き。いっぱい感情表現があるような役に、いつか挑戦したいです」

  • 出演:上原実矩(うえはら みく)

    1998年11月4日東京生まれ。映画『全員、片想い』episode「MY NICHINAMEisBUTATCHI」『暗殺教室~卒業編~』『ガールズ・ステップ』TVドラマ『TBSドラマNEO放課後グルーヴ』CM『ゆうちょ銀行「ゆうちゃん・父の単身赴任」篇』『NTTdocomo「世界はひとりの複数形でできている」篇』などに出演。

    オフィシャルサイト http://www.hirata-office.jp/talent_profile/woman/miku_uehara.html

    ヘアメイク:清水明菜(Magnet Tokyo)

    スタイリスト:ベイカー恵利沙

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/