女優・小川あんさんから緊張と不安を取り除いてくれたのは、映画を愛する若き才能たちとの出会い。

「映画監督の藤井道人さんのオーディションに計5回くらい行っているんですけど、いつも落ちていて。でも毎回呼んでくれるんです。どうしてだろう? と思っていたら、主演映画が決まったんです。藤井監督の紹介で他の映画監督さんたちにも、みんな若い監督なんですけど、知り合って、いっぱい刺激を受けました。本当に撮りたいものを撮っている。時間とか予算とか関係なく、強い信念で好きなものを撮ろうとしているその方たちを見ているうちに、私の悩みもいつの間にか消えていて。私、ただ芝居がしたい! 芝居しかしたくない!って」

 さらに出会ったのが、寺山修司の戯曲だ。

「ワークショップで『血は立ったまま眠っている』をやったんです。私は物語と出会うと、その前とか後を勝手に妄想するのが好きなんですけど、これと出会ったとき〝これは、なんだ?〟って、手も足も出なかった。今まで私が出会ってきた戯曲のあり方を全部覆されたような。自分ではいろいろやってきたつもりだったけど、全然足りていなかったのがわかって、すごく恥ずかしくなりました。これからやるべきことがいっぱいあるんだなって」

 そして、スイッチが入った。

「今はお芝居するのがすごく楽しいんです。たとえオーディションでも、そこでお芝居ができると思うだけでワクワクします。もうね、お芝居、大好き!」

  • 出演:小川あん(おがわ あん)

    1998年生まれ。東京都出身。2013年から本格的に芸能活動を開始。2014年『パズル』で映画デビュー。今年だけでも東京藝術大学長編作品『結城家の眠り』、『夢見るカフェ』短編『後ろ向きの青』など出演、主演作品が次々に公開される。7月24日からTVCM「進撃のゲオキャンペーン 女子高生編」もオンエア中。

    オフィシャルサイト  http://www.tommys.co.jp/profile/ogawa_an.html

    Twitter https://twitter.com/ogawa0329an

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/