女装と書道、このスーパー縁のなさそうな2大カルチャーのドッキングは、衝撃的。今のところ世界で実現してるのは、Maayaさんだけだ。

「18㎝ヒールのパンプスを履いて、コテコテのドレスを着て超コンディションの悪い中、あのクオリティを出せるのはたぶん、僕だけだと思います。ただ目立ちたいのではなく、ちゃんと僕の中には鍛えたものがあるから、自信を持って見せることができる。書道は大学でも専門的に勉強してきましたし、女装もきっちり鍛えたからこそ、できることなんです。しかも書いているときは僕の中で一番アドレナリンがでてドーパミンもでて、なおかつ女装もハイテンションになりますから、それでお客さんが感動しないわけがない。・・・・なーんて、傲慢でビッチな、ドラァグクィーン的な物言いをしてみました(笑)」

 ここに至るまで、平坦な道を歩んできたわけではないのだ。

 大学を卒業後、美容師の資格をとってニューヨークへ。多種多様な人々を受け入れてくれる街・NYで生活するには美容師になるのが一番の近道、と聞いて選んだ選択だったが、「美容師になりたかったわけじゃない」と気付いて8ヶ月で帰国。その後はさまざまな職業につきながら、定期的に書の個展を開くことは続けていた。
 転機となったのは、2011年の東日本大震災。

「東京にいたんですけど、〝ああ、もうダメかもしれない〟と思ったんです。同時に〝このままじゃ人生終われない〟とも思った。〝まだまだやりたいことがたくさんある!〟って。それをきっかけに、大好きな書道を本業にしよう、と思い、プロの書道家になりました。
 でもそれまでの人生を、無駄だとは思わない。遠回りは財産だと思っています。いろいろな経験値が自信になっているし、自分を信じて自分の道を突き進むために、必要な道程だったのかな、と」

  • 出演:Maaya Wakasugi

    17歳で初個展を行い、「古代文字」をモチーフとした独自のスタイルを確立。ロンドン大学での個展、パリのルーブル美術館公認の関連NPOロゴマーク制作、アーティストやクリエーターへの作品提供とコラボレーション、パリやベルリンでのパフォーマンスなど、世界各地でさまざまな活動を続けている。昨年は台湾の襲園美術館で個展を開催、7月にはNYをベースに活動するバンド『Computer Magic』とMoMAで共演し、即興パフォーマンスを披露した。

    Maaya Wakasugi個展
    『La Coastline』

    2月4日(水)~13日(金)
    Moca東京
    〒150-0001
    東京都渋谷区神宮前2-14-17 2階
    http://goodagingyells.net/colorful-station

    Maaya Wakasugi
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.maayamaaya.com/

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    【OFFICE303】
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.office303.jp

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  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/