メイクルームにこもって、約1時間。「そろそろいいですよ~」と、撮影の許可が出た。
 鏡の前にいたのは、ドラァグクィーンMaaya! ヒゲをそり落とし、大胆にして緻密なメイクアップをして、今にも蜂蜜色の特大ウィッグをかぶろうとしている。
 ケバくて派手で、ファンキーでポップで、ゴージャスでキンキー!
 さっきまでの着物姿の日本男児は、どこにもいない。

「そのギャップ、ですよね。自分の素の部分と、コテコテ着飾る部分のギャップを自分で楽しんでいるし、見る人にもそれを楽しんでもらえる。女装って、ちょっと過剰に振る舞ったりとか、非日常を演出できるものでもあるんです」

 最初に女装したのは、18歳の頃。浪人生活を送っていたとき、友だちとイベントを企画する中で、自分の得意な書道と女装を組み合わせてみたら、観客から大好評だった。

「そこから書道クィーンというキャラクターができたんです。あ、これは僕にしかできないスタイルだな、と発見して、この部分は大事にしていきたい、自分の中に育んでいきたいと思ったんです」

 そしてそこには、もうひとつのギャップも潜んでいた。

「17歳のときに個展を開いて、いわゆるザ・書道界に所属していたんですけど、当時の書道展には書道家や書道愛好家、関係者しか来ていなかった。すごく閉鎖的な世界だな、つまんないな、という想いがあったんです。その閉鎖的な書道と派手な女装がミックスしたら、そのギャップでふつうのお客さんにも楽しんでもらえる。だって、コテコテの女装が真剣に字を書いていたら、すっごくオモシロおかしくありませんか? 自分も楽しい、人も楽しい。それって最高じゃないですか!(笑)」

  • 出演:Maaya Wakasugi

    17歳で初個展を行い、「古代文字」をモチーフとした独自のスタイルを確立。ロンドン大学での個展、パリのルーブル美術館公認の関連NPOロゴマーク制作、アーティストやクリエーターへの作品提供とコラボレーション、パリやベルリンでのパフォーマンスなど、世界各地でさまざまな活動を続けている。昨年は台湾の襲園美術館で個展を開催、7月にはNYをベースに活動するバンド『Computer Magic』とMoMAで共演し、即興パフォーマンスを披露した。

    Maaya Wakasugi個展
    『La Coastline』

    2月4日(水)~13日(金)
    Moca東京
    〒150-0001
    東京都渋谷区神宮前2-14-17 2階
    http://goodagingyells.net/colorful-station

    Maaya Wakasugi
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.maayamaaya.com/

    お問い合わせ

    【OFFICE303】
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.office303.jp

    Tel 日本
    (81)3-6276-5607
    Tel台湾
    (886)925-188-444

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/