まずは書道家として、一筆したためていただいた。
「虹」という字の古代文字だ。
 大きな白い和紙に大きなアーチを、太い筆で力強く、伸びやかに書いていく。(ちなみに、和紙の折ジワは、あとから専門家が裏打ちして額装するとキレイになるのだとか)

「僕は主に文字をモチーフに書いているのですが、例えば〝心〟という文字は心臓の形、ハートの形をしている。時代によって、いろいろな形のハートがあるし、それが右心房なのか左心房なのかはわからないけれど、可愛いビジュアルが多くて好きなんです。その時代に生きていた人々のバイブレーションやエネルギーを瞬間的に捉えたもの、それが文字という形になって現れるんですね。
 そんな僕の作品を、絵なのか、文字なのか、聞かれることがあります。僕の中では、土台は文字だけれど、僕自身、それを制限したくありません。その瞬間に感じたこと、記憶に残ったもの、パッションや想い・・・、それが僕を通して形になるんです。絵でもいいし、文字でもいい。絵でなくてもいいし、文字でなくてもいい。それが、僕が書きたい〝書〟だから」(以上のコメントはご本人の意向により、『よみタイム』より転載しました)

 たしかに私たちを囲む文字ひとつひとつには、何かしらの意味があり、想いがあり、美しさがある。言霊のように、字にも魂があるはずだ。Maayaさんの書には、その魂まで書き込まれているのかもしれない。

「赤塚曉月先生がよく言っていました。字には形と線がある。お手本の〝形〟をそのまま写せば、字は上手になる。でも〝線〟には書く人の心そのものの動きが現れるって。書く人の日常の生き方や心根が、そこにはちゃんと出てしまうんです。ですから自分の名前を書くときは、なるべくていねいに書くべきです。だってそれは、自分を書くことなのだから」

 書き終えたMaayaさん、では、と席を立った。もうひとつの、ドラァグクィーンの顔を、私たちに魅せてくれるために。

  • 出演:Maaya Wakasugi

    17歳で初個展を行い、「古代文字」をモチーフとした独自のスタイルを確立。ロンドン大学での個展、パリのルーブル美術館公認の関連NPOロゴマーク制作、アーティストやクリエーターへの作品提供とコラボレーション、パリやベルリンでのパフォーマンスなど、世界各地でさまざまな活動を続けている。昨年は台湾の襲園美術館で個展を開催、7月にはNYをベースに活動するバンド『Computer Magic』とMoMAで共演し、即興パフォーマンスを披露した。

    Maaya Wakasugi個展
    『La Coastline』

    2月4日(水)~13日(金)
    Moca東京
    〒150-0001
    東京都渋谷区神宮前2-14-17 2階
    http://goodagingyells.net/colorful-station

    Maaya Wakasugi
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.maayamaaya.com/

    お問い合わせ

    【OFFICE303】
    オフィシャル・ホームページ
    http://www.office303.jp

    Tel 日本
    (81)3-6276-5607
    Tel台湾
    (886)925-188-444

    よみタイム

    http://www.yomitime.com/people/10.html

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/