筆者も大阪出身であるので、大阪から東京へ出てくることが「大阪の女」にとってどれほど大変なことか、というのはよくわかる。
  新幹線で2時間半だとか、いや飛行機なら1時間だとか、そんな距離の問題ではない。文化も考え方も、おそらく同じ国であって外国くらいに違うからである。
 高原愛は高校生から大学生にかけて、大阪でモデルの仕事を始めたのだという。

「高校のときはファッション誌を読んでいて、モデルという職業に憧れはありました。学生のファッション・ショーが、最初のステージだったかな。大学に入った後は理系だし勉強も忙しかったから、両立しながらバイト感覚でやる程度でした。事務所には所属していたんですが」

 いやいや、実は彼女、大阪でかなり大きな仕事もしている。

「南海電鉄の広告で、高野山が世界遺産になったときのポスターに出させてもらったんです。お寺に1泊2日して、日の出とともに撮影していたんですが、1年間、季節毎に車内吊りやポスターにしてもらえて、それはすごくうれしかったですね。そのうち東京の事務所に入らないかという話をもらって、自分で写真を撮って送る勇気はなかったので、誘ってもらえてうれしくて。華やかな世界に単純に憧れたんです」

 上京してみると、モデルの仕事の現実は厳しかった。

「大阪にいたときは、東京のモデル=すぐに雑誌で活躍できそうに思っていたんです。ところがモデルの仕事にもいろいろある。カタログとか、チラシといったものもあります。それにオーディションに行かないと仕事ってないんですよね。ギャップというわけじゃなくて、ああ、仕事ってこういうことなんだな、と思い知らされました」

 オーディションを受けては落ちる日々。

「ああ、南海電鉄の駅であんなに大きなポスターになっていたのになあ…、って、口惜しくて」

 ところがそんな彼女は1年半後、トリンプのイメージガールという大きな仕事をオーディションで掴んだのだった。

  • 出演:高原愛

    1990年大阪府生まれ。関西大学化学生命工学部卒。2012年に上京、本格的なモデルの仕事をスタートし、2014年に第22代トリンプ ・イメージガールに選ばれる。明るい印象で雑誌やショー、広告へと仕事の場を広げている。

    公式ホームページ  http://incent.jp/idea/model/takahara/index.html
    ブログ http://ameblo.jp/takahara-ai/

  • 取材/文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本も多数。
    自著には女性の生き方をテーマにしたものを中心に『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)など多数。映画『ハンティングパーティー』のノベライズ、映画『音楽人』の原作WEB小説などノンフィクション、フィクションを問わず執筆する。
    公式ホームページ http://moriaya.jimdo.com/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/