歌手MIYAKOは2009年10月にデビューした。そのときのキャッチフレーズは「アラフォーだけどメジャーデビュー」。かなりベタです。

 MIYAKO以前の彼女とは、20代の頃に同僚だったことがある。当時の会社の忘年会で「好きになった人」をカラオケで歌う歌声を聴いて、尋常じゃない上手さに驚いたものだ。ちなみに「好きになった人」は今もMIYAKOの十八番だ。

 子どものときから、歌が好きだった。そして、家の中にはつねに音楽があった。父は日本で随一のヴォイストレーナーであり、自宅には時代を代表する歌手たちが毎日レッスンに訪れていた。

「お父さんは昔からカッコ良かった。ジュリーよりおしゃれで、エレガントで強くて。何より音楽をやっているし。小学生のときから仕事を終えた父の晩酌につきあったり、いつもべったり一緒。ほんとファザコンです」

 小学2年生のときに音楽の先生の勧めで小学生音楽コンクールの独唱部門に出場する。東京大会3位に入賞した。小学3年生で関東大会3位、4年生で全国大会3位。着実にランクアップはしているが……。

「いつも3位なんですよ! 5年生のときは歯科優良児で渋谷区3位、6年生になって健康優良児も渋谷区で3位。もう、3位のオンナ(笑)」

 3位のオンナから抜け出たのは、ある映画の主役オーディション。しかし、目前で優勝を逃してしまう。

 もしもそのとき女優になっていたら、人生が変わっていた?

「最近、人生で“もしも”って、実はないのかもしれないと思うようになりました。どっちに行っても結果は同じだったような気がします」

 彼女自身は歌手をめざしていた。だが、父は絶対に娘に歌を指導することはなく、歌手になること「だけは」反対し続けていた。

 高校卒業後、念願のアメリカ留学。その後、留学経験を生かして、輸入雑貨店のディレクションやデザイナー、留学予備校の設立といった仕事に従事する。しばらくの間、音楽から離れた生活をしていたが、あるとき上司に「本当は、もっとやりたいことがあるんじゃない?」と言われた。そして転機が訪れた。

 同じ頃、それまでプロ歌手や俳優のみを指導していた父が、ヴォイストレーニングの指導者を養成するアカデミーを設立、ニューヨークのカーネギーホールで発表会をしようという話が持ち上がった。そこで単身アメリカに渡り、熱心に交渉を続けた結果、使用許可を得ることができたのだ。

 1996年、カーネギーホールで彼女は「好きになった人」を歌った。

「音楽の殿堂は違いました。歌った音が、声が、音符が、ぱらぱらって落ちてくるんです! もう、歌い手として、こんな素敵な体験はありません」

 ようやく歌手へと邁進? いやいやデビューまで、まだあと13年かかる。彼女はヴォイストレーナーである父のサポート役に就いたのだった。

 さて、ヴォイストレーニングのレッスンというと「ア~」と発声練習を……「うちのレッスンは違いますよ」たしかに、想像とは違った。

  • 出演:MIYAKO

    東京都出身。1月24日生まれ。水瓶座O型。小学5年生のころから独学でピアノ、作詞作曲を始め、中学時代にはフォークソングクラブを設立し、学園祭では初めてのライブを体験。高校時代はフォーク村同好会に所属、オリジナル曲でのライブ活動を中心に、ヤマハのポプコンなどにも出場。留学先のボストンのエンディコット・カレッジでは、コマーシャルアートを専攻。卒業後はデザイナー、アートディレクター、カウンセラーなど、多彩な才能を活かし第一線で活躍。1996年、ライフワークである音楽を再開。ニューヨークのカーネギーホール、ホノルルのハワイシアターなど、世界の檜舞台を経験。2009年10月21日、MIYAKOとして念願のメジャーデビュー。透明感のある伸びやかな歌声はまさに自然体。限りなくキレイを追求する、スタイリッシュな「新世代アラフォー」。デビュー以降は、フォーシーズンズホテル椿山荘東京の「スタンダードジャズとほたるのゆうべ・ディナーショー」をはじめ、「着物 de Jazz」、年2回開催の「MIYAKO & Papa Special Live」など、精力的にライブ活動を行なう。
    2013年6月、コロムビア・マーケティング(SVACレーベル)より待望のファーストアルバム『白い花の咲くころ』を発売。全19曲入り。歌謡史100年の名曲の数々をジャズ・ピアニストの小泉宏がスウィートジャズコンボ風にアレンジし、MIYAKOが誘う魅惑の世界が完成した。。
    公式ホームページ http://www.miyako-creative.com/
    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/miyako-creative/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影:萩庭桂太