またしても今日から2週間に渡っての、台湾編である。なんと今回は、エバー航空とFORWARD HOTELから取材協力をいただき、なかなか快適な取材旅行となった。

 エバー航空は’94年に日本への乗り入れを開始。現在、日本の航空会社では全日空と提携しており、CAさんも若くてきれい。衛生的で快適。ハローキティジェットをいち早く飛ばしたことでも有名で、5月23日からは羽田~台北間でも乗ることができる。今回はハローキティジェットには間に合わなかったのであるが、取材班は修学旅行にいく学生のように、羽田に集合した。

「ハギニワさん、おはようございます」

 萩庭桂太はLeicaにしてから実に軽装備である。しかしどうもださいナイロンの紺の上着を着ている。背中に白文字ででっかくなんか書いてある。

「あ、これ、変かな。ノベルティなんだけど」

 見ればTシャツもトートバッグもノベルティである。白いパスポートケースは新しかったが、それも自動車会社のノベルティであった。

「まるで30年前のラジオディレクターですね」

「そうかな…まあいいや」

 ノベルティ萩庭は飛行機に乗ると『三丁目の夕日』を見て大きな声で笑っていた。そして機内食を完食した。

 台湾取材は前日とか前夜にアポイントが決まる。

「羅志祥(ショウ・ルオ)が時間をつくってくれました」

 今回もコーディネーターをかって出てくれたゼンゴくんが嬉しそうに言った。大忙しのスケジュールの隙間に我々の取材を入れてくれたのだという。

 しかし困ったことに私は彼について下調べをする時間がなかった。ま、してもしなくてもあまり変わりはないのだが。本人を前に、ええと、なんというお名前でしたっけ……と、資料を見ながら書こうとすると、彼はにこりと笑って私のノートをやおら取り上げた。

 羅志祥、と美しい字で書いてくれた。

 私は24年前に初来日のミック・ジャガーを張り込みで捕まえ、片言の英語で質問してぺらぺら返ってきた答えがわからず、メモに書いてもらったことをふと思い出した。この人もどこか大物の匂いがする。が、私だけがよく知らないのである。で、ご本人を前にして、こともあろうか『徹子の部屋』状態の質問をしてしまった。

「えっとあの、あなたは歌からお始めになって?」

 通訳が訝しげに私の言葉を翻訳した。サングラスのまま向かいあった彼は一瞬、ん? という顔をしたが「この人、何も知らないおばさんなんだ」と気づいたようで、噛んでふくめるように説明してくれた。

「15歳でデビューして17年ですかね。デビューのきっかけはモノマネ大会だったんですよ。それから歌手、役者、司会者となんでもやります。日本で言えばSMAPのような感じです。07年に日本でも『あいかど』という愛称で人気になったドラマに出たことから急激に人気が盛り上がりました」

 原題は『轉角遇到愛』。これがアジアで大ヒットした。

「芝居、司会、歌。全部、ぼくの命です」

 いきなり日本語が返ってきた。その口調に覚えがあった。あれ、この人、もしや……。マネージャーさんがたまりかねて説明してくれた。

「前回のツアーは35カ国60万人を動員しました。彼のツイッターのフォロワー数は1300万人なんですよ」

 私は急に脂汗が出てきた。この人、C-popのすごいアーティストだったんだ。

 どうやら日本でも大人気らしい。上海では2万人、日本でも東京や大阪でストアイベントをやれば簡単に2000人は集まるのだという。どの国の評判が一番かと聞くと「どの国も同じ。ヤバいの感じ!」と、また日本語が返ってきた。

「あの、日本語がお上手過ぎるんですけど、何か番組に出てらっしゃいましたね」

 我ながらとぼけた質問である。こうなったらとぼけたまま押し通すしかない。

「倖田來未さんと司会をしていましたよ」

 あ、あの番組だ。02年頃、フジテレビで深夜にやっていた「亜州進行式」。それで日本語の口調に聞き覚えがあったのだ。

「み、見ていましたよ」。慌てて言うが、時すでに遅し。過去最高にとぼけたインタビューをしてしまった。しかし、彼は本当にいい人であった。

「日本の女の子は可愛いです。一緒にいて気持ちが安心できる。シャイだしね。中国や台湾の女の子はストレートに自分を表現してきますね」

 この日はインタビューのみ。撮影は東京のポニーキャニオンで行われた。サングラスをずした顔、私も拝みたかったな。

 今年の夏、台湾からアジア最大のレコードショップFIVE MUSIC
http://www.5music.com.tw/)の日本版サイトが立ち上がる予定だ。羅志祥はそこでのトップ・アーティストでもある。6月20日には新曲『Magic』がリリースされる。日本での人気も鰻上り。私のノートの「羅志祥」のサインは、ますます貴重になっていくのだろう。

  • 出演:羅志祥(ショウ・ルオ)

    1979年台湾基隆市出身。’96年にユニット「四天王」の一員としてデビューし、歌手、役者、司会と幅広い活動でアジア中の人気をさらう。’06年には倖田來未とのデュエット曲「Twinkle」が日本でも話題に。’11年7月には日本でのアルバム『Only For You』発売。
    日本公式サイト http://www.aziosc.com/show/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • コーディネーター:木山善豪

    アジアエンタテイメントのコンサルティングを核とし、中国語圏のエンタメビジネス全般のサポートを手がける。台湾と日本の血統を合わせもつスタッフで構成された組織で、両国での幅広いネットワークとバランス感覚をもつ。
    [OFFICE303] ENTERTAINMENT&MODEL http://www.office303.jp/

取材協力:
エバー航空 http://www.evaair.com/html/b2c/japanese/
「ハローキティジェットが羽田~台北にも登場!」

台北馥華商旅(FORWARD HOTEL) http://www.imvr.net/hotel/fwhotelsj/

ギア・ハウス、ギア・サポート(東京) http://www.gearhouse.co.jp/

撮影:萩庭桂太