2カ月ほど前の週末の夜。近所のカフェでオムライスを頬ばっていると、目の前でスパゲッティを食べるこの『週刊文春WEB』の連載担当であるN局長が、「最近はどう、仕事、忙しい?」と聞いてきた。

 顔を上げると、N局長はまるで蕎麦を食べるように、箸でナポリタンをズルズルやっている。フォークが嫌いなのだろうか。よほど箸が好きなのだろうか。食事のスピードは猛烈に速い。この人は、まるで小学生のように、いつもナポリタンを食べている。メニューにない店でも、強引に作らせる。

 N局長とは家がご近所同士。50歳と60歳のオヤジで、1カ月に1,2回、ジャンクなご飯を食べている。店内はわれわれの周囲のテーブルだけ客がいない。オヤジ合コンの話だとか、気が緩んで大をもらした話とか、話題がいつも下品なので、店のスタッフがわれわれの近くのテーブルにはほかの客を案内しないのだ。

「今、『週刊文春WEB』で『萩庭桂太のYOUR EYES ONLY』という連載を週に5回やっているんだけどね。その記事を書いているライターの森綾さんは忙しいから、毎回毎回頼むのも申し訳なくてさあ。だから、時々手伝えない?」と、N局長。

 どうも話のつじつまが合わない。レギュラーの仕事を発注して、継続してギャラを支払って、相手に感謝こそされても、「申し訳ない」はずはない。

「いやね、仕事なんだけど、これ、ギャラが……ないに等しい」

 N局長はにやにやする。悪だくみをする笑福亭鶴瓶という顔だ。なるほど、よーく理解できた。ほぼノーギャラの仕事を僕にもやれ、と。

「うん。この悪条件で森さんを拘束しすぎたら悪いでしょ。『週刊文春WEB』ばかりやっていると、彼女、破産しちゃうからね」

(取材・文:石神賢介)

【後編】につづく

ステアウェルズ -ジャパン・エディション-

[アルバム] 2012.05.23発売 2100円(税込) Victor VICP-65056
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A024022.html

  • 出演:キナ・グラニス

    米ロサンゼルス在住のシンガーソングライター。1985年にアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれる。本名はキナ・カスヤ・グラニス。2007年、YouTubeを通じてオリジナル作品を発表し始める。2008年のスーパーボウルで彼女のオリジナル曲「メッセージ・フロム・ユア・ハート」が流れたことで全米に注目される。5月23日、アルバム『ステアウェルズ-ジャパン・エディション-』をリリース(2100円/ビクターエンタテインメント)。現在、世界中で年間約100本のライヴを行い、8月4日(土)ビルボードライブ東京、6日(月)ビルボードライブ大阪で公演を予定
    http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A024022.html

  • 取材・文:石神賢介

    1962年東京都出身。昨年出版した40代バツイチオヤジの婚活記『婚活したらすごかった』(新潮新書)があっという間に10刷のヒット。ネット婚活や婚活パーティーで出会った女性たちとさまざまなセックスをくり広げ、高価なブランド品を度々買わされた、ハウツーにもなる実話が受け、ラジオ出演多数。最新作は『なぜ「スマ婚」はヒットしたのか』(幻冬舎ゲーテビジネス新書)。既婚者の誰もが思い当たる結婚式が高額である理由を徹底的に取材し、ブライダル業界で誰がどうやってもうけているかを解明した。


    http://www.shinchosha.co.jp/book/610430/
    http://www.gentosha.co.jp/book/b5545.html

取材協力:FIAT CAFFE http://fiatcaffe.jp/
撮影:萩庭桂太