音楽プロデューサーの月光恵亮さんの紹介で、ワクワク、ドキドキしながらしおりちゃんは芸能事務所の面接に向かった。だが、百十四銀行のCMガールを務めただけで、それまで何のキャリアもない彼女に対し、事務所の社長の反応はものすごーくニブかった。

「トシは? え~、22歳? 意外とトシくってるなぁ」

「…………」

「演技の経験は? え~、ぜんぜんない? 歌のレッスンを受けたことは? あ~、そっちもまるでナシ?」

「…………」

 これがいわゆる圧迫面接か、と、内心ビビるしおりちゃん。だが、次の質問で状況がガラッと変わった。

「じゃあ、キミはいったい何ができるの?」

「はい、マグロ解体師の検定を取ろうと思ってます!」

「え、マグロ解体師? 何それ、すごく面白いじゃん。じゃあ、とりあえずうちの事務所に所属して、その検定を受けてみなよ」

 なんと“マグロ解体師”のひとことで社長のハートをバッチリ掴んだしおりちゃん。めでたく、岡江久美子さんや秋本奈緒美さんらが所属する大手芸能プロダクションに所属できることになったのだ。

 しかし、いったいなぜマグロの解体師? 普通の女のコはまったく興味を持たないだろう。っていうか、マグロ解体師の検定があるなんて、私も今回初めて知りました。

「東京に出てきて半年後、女優になるためには、早く何かの手段で世に出なきゃと考えました。お天気お姉さん? 大食い選手権? いやいや、そんな女のコはすでに山ほどいるわけだし。何の経験もない自分に注目してもらうにはどうしたら? そう考えていた矢先、路上に貼ってあった“マグロ解体師募集!”のポスターを見つけたんですよ。そこで、“そうだ、このマグロ解体師の検定に挑戦しよう!”って、ひらめいたんですね」

 なぜそこで「そうだ!」と思いたったのか。正直、その思考回路はいまいち謎なのだけど、そのユニークなひらめきのおかげで、しおりちゃんは幼い頃からずっと憧れていた芸能界の一員になったのだ。

 もちろん、事務所に所属した後にきちんと勉強し、試験を受けてマグロ解体師3級の資格を取ったそう。先日は、いなせなハッピ姿でマグロの解体ショーにも参加して、粋な口上を聞かせたり、マグロのお刺し身を作ったり。

 さらに、“マグロ”だけでなく、しおりちゃんにはもうひとつ大きな武器がある。さあ、それはいったい何でしょう? 答は明日の写真を見れば一目瞭然♪

  • 小野しおり

    1992年、香川県生まれ。高松商業高等学校卒業後、四国医療専門学校へ進学。同校在学中の2012年に、香川県・百十四銀行のCMガール「サリュカ美人」に選ばれる。BJリーグ「ファイブアローズ」イメージガールも。同年末に上京。14年に芸能プロダクションのスタッフ・アップに所属。
    小野しおり公式プロフィール http://www.staff-up.net/staffup/9.html
    小野しおりオフィシャルブログ http://ameblo.jp/shiori-ono0201/

  • 取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

撮影:萩庭桂太