葉桜の季節になったある日の東京。小松美羽は薄い夏物のキャミソールドレスに黒い分厚いニットのカーディガンというスタイルで現れた。黒タイツにスニーカー。バラバラなような、でもそれもありかと思わせる独特の浮遊感が漂っている。

「おはようございます。よろしくお願いします」

 痩せていてすっぴんだが、本当に美人だ。しかも「痩せていて画家」というところからイメージする神経質そうな感じもない。

「花園神社の狛犬を見にいきましょう」

 いきなり狛犬ぅ? 

「私、狛犬が大好きなんです。花園神社の狛犬は古くて、しかもディテールがとても細かい。ほら見てください。しっぽまで丁寧にできているでしょう」

 ふーん。

 萩庭桂太が撮影しようとすると、彼女は「ちょっと待ってください」と、我々全員を引き留め、本殿に率いた。

「撮らせてもらう前に、まずお参りしないと」

 柏手を打ち、私は心の中でお願いする。「小松さんの取材が無事終わりますように。そしてどうか、この連載で、早くみんなにギャラがいっぱい支払われるようになりますように……」

(取材・文:森 綾)

【後編】 打ち合わせの途中で『帰っていいですか』と飛んで帰って描きました

  • 出演:小松美羽

    1984年11月29日、長野県生まれ。趣味は狛犬研究、漫画や小説の創作、なぎなた(北信越3位)、水泳と幅広い。女子美術大学短期大学部卒。2004年度 女子美術大学 優秀作品賞、日本版画協会版画展 入選。2012年 小松美羽作品展「画家の原点回帰 ~ウガンダ~」(オリンパスギャラリー東京・大阪)
    http://www.miwa-komatsu.com

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:世界堂新宿本店 http://www.sekaido.co.jp
撮影:萩庭桂太